今回は双城厳一という人物について掘り下げていこうと思う。
双城だが、タイミング次第では六平千鉱に勝てた可能性が高かったと考える。
まず初めに、双城が「刳雲」をまともな実践で使用したのは六平千鉱との戦闘がほぼ初めてであるという点だ。
3年という期間を経て、妖刀の扱いになれている千鉱に相当な分がある。
証拠として、溜めをつくった”鳴”にはインターバルが必要という戦闘に必要な最低限の知識を身に着けていなかった。
また妖刀が持つ3つの能力を使えてはいるものの、どちらかといえば剣技頼りの戦い方であった。
千鉱との戦いを有利に進めたというのも持ち合わせた膂力という才能と、千鉱が命を懸けて”鳴”を受けきったというアドバンテージを活かせたおかげでもある。
妖刀の力で考えると大味で派手な攻撃が目立ち、技巧的な使い方は魅せるに至らなかった。
このような観点から考えると、双城自体が妖刀の力をフルで使いこなせたかというといささか疑問が残る。
次に見ていくのは神無備との戦闘である。
「刳雲」奪還のために神無備は「対刳雲奪還部隊」として6名の精鋭を送り込む。
妖刀と戦うというノウハウに欠如していたとはいえ、千鉱が残したアドバイス通りの戦闘の組み方を行い、結果として終始神無備が想定していた通りに戦闘が進んでいた。
神無備側が用意した戦術と地の不利を考慮しても、妖刀というアドバンテージがあったにも関わらず一度「刳雲」を奪われるという時点で使いこなすまでには至っていなかったと考えるのが妥当に思える。
この戦闘を経てようやく玄力を纏う感覚を身に着けたということで、双城には妖刀を使った実戦経験が圧倒的に欠如していたという裏付けが強くなる。
ひいては最初の千鉱との戦闘、そして神無備との戦闘の時点で双城が「妖刀に玄力を纏う」という感覚を得ていたのであれば戦局は大きく変わっていたと想定できる。
そもそもにしてポテンシャルという点で考えれば昼彦にも引けを取らない。
先述したように「纏う」という感覚を神無備との戦闘中に習得するという時点で、成長速度は著しい。
さらには戦闘IQという観点でも、未詳な妖刀である「淵天」という武器をたったの2度の戦闘で見事に分析している。
「観測してるやつの手札は今の”錦”とやら以外に3つ。
① 遠隔斬撃
② 鳴を無効化した防御術
③ 避雷針に使用した雷」
『カグラバチ』2巻 第17話「茶」 著者:外菌 健 発行所:集英社
圧倒的な情報戦の不利でも、ものの見事に丁寧な分析をしており、瞬発的な対応力で考えてもトップクラスの実力者であったことは間違いないだろう。
もちろん千鉱も妖刀使いの発展途上ではあるが、それ以上に歴が浅かった双城には多くの伸びしろが存在した。
その観点から考えれば双城にはもっと活躍の場があった可能性も十分にあるといえるだろう。
序盤の強敵としては一番いい見せ場ではあったが、妖刀を使いこなす姿もみてみたかったというのも本音である。
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