【感想・レビュー】『コーダ ~あいのうた~』①音のある/ない世界【ネタバレあり】

映画

ルビーの告白

 そこで、ついに家族に音楽大学を目指していることを告げる。

 自分の好きという気持ちを大切にしようとしたし、家族からの依存から自立しようとした

 大学の立地にを理由に反対する父と、ルビーがいなきゃ事業が成り立たないと説得する母。

 両親はルビーと一緒に居たいという想いが強かった。

 ただ「家族としての協力」であるのか、「外の世界に向けた通訳」として頼っているのか、その境界線は曖昧であった。

 ルビーはそんな「音のない世界」に縛られた生活から脱却したかったのだ。

 それに対して母は協同組合を設立してばかりで時期が悪いと話すが、「いい時なんて来ない」と反論する。

 これについては本当にそうだと思う。

 ルビーが自分でタイミングを作り実行しない限りは一生抜け出すことができない環境であった。

「一生家族とはいられないわ」

 歌を通して自分の好きなものを理解し、心の奥底に閉じ込めていた感情に気付くことができたルビー。

 家族のための人生ではない、自分のための人生だというこの主張から、大人への階段を大きく進めるきっかけとなる。

 父はこれからもずっと通訳をするということを期待していないとはいうものの、これまでを見る限りは今後もずっと通訳として徹さなくてはいけないだろうことは予測できてしまう。

 つまり父の話す言葉に説得力がないのだ。

 「音のない世界」にいて欲しいと願い、いつまでも子ども扱いをする母に対し、父は大人として扱いながらルビーの将来について真剣に考え出した

 もちろん母が語ることもよくわかる。自分が知らない・知ることができない「音のある世界へ飛び込もうとしているのだ。

 その世界に入ってしまったら自分が協力できる余地は少なくなるし、何より自分らの経験値から語れない分野である。とにかく心配が強い。

 反対をしていたというより、合唱という「音のある世界」は自分とは無縁で理解ができないものだと真っ向から拒絶していた

 兄・レオが漁をしても売り上げが出ないため協同組合を提案したとき、父は耳を聞こえないことを理由に反対していた。

 「音のある世界」に壁を感じているのは間違いないし、事実壁があることも間違いない

 家族は「音のある世界」「音のない世界」を二分化して考えていたのだった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました