今回は奇跡的な生還を果たした釘崎野薔薇についてみていこうと思う。
”渋谷事変”編にて、分身に攪乱され警戒心を解いていた釘崎は真人の「無為転変」をモロ喰らってしまう。
左頭部を損傷する大ケガとなり命が絶たれたと思われていた。
しかし、そこへ東堂葵と新田新が援護に駆け付ける。新田の術式により、釘崎はこれ以上の怪我が 広がらないように処置はなされたが、呼吸・脈もない危篤状態であった。
その後、”渋谷事変”編が終わり乙骨・伏黒と合流したタイミングで容体を聞くも、伏黒は黙り込んでおり生存にはあまり期待ができなかった。
さらには”人外魔境新宿決戦”編 第265話「あの日」では祖父・倭助、吉野順平、七海建人、脹相、五条悟というすでに亡くなった面々に釘崎を思い浮かべるなかで「死に方」を宿儺に説くシーンがあり、この時点で釘崎はすでに亡くなっているのだと思われていた。
読者がそう言った面持ちで待っている中、”人外魔境新宿決戦”最終局面で目覚めた釘崎。
宿儺の指最後の1本から「共鳴り」を喰らわせることで宿儺の領域展開を阻止。
虎杖たちの勝利に見事貢献する。
というのが釘崎復活のいきさつであった。
個人的にカギとなったのは26巻の回想シーンで七海が語った冥冥の言葉である。
「新しい自分になりたいなら北へ。
昔の自分に戻りたいなら南へ行きなさい。」
『呪術廻戦』26巻 第236話「南へ」
実はこれ、釘崎にも当てはまるのではないだろうか。
七海は死ぬ間際にマレーシア・クアンタンに行きたいと望みながら死んでいった。
五条も新しい自分ではなく、思い出の地である沖縄を連想させる空港を望んでいた。
どちらも南へ旅立っていることから昔の自分に戻りたいと願っていたといえる。
走馬灯として釘崎が思い浮かべたのは高専に移るまでに住んでいた岩手県のとある村であった。
このころの思い出を、釘崎は良いものと受け止めてはいない。
「私ってつくづく環境に恵まれないのね」
『呪術廻戦』1巻 第5話「始まり」
「あの村にいたら私は死んだも同然」
『呪術廻戦』1巻 第5話「始まり」
これらのセリフからも出生の土地にかんしてポジティブな意見ではなく、なんなら戻りたくない場所としているようにも思える。
それにもかかわらず、高専に入学していこう楽しんだ東京という土地や同じ1年生として遊んだ記憶が蘇ったわけではない。
釘崎が故郷=北の自分を思い描いたのは、故郷こそが「新しい自分になりたい」と願った場所であり、今後も変わり続けたいという未来への希望があったのではないだろうか。
七海と五条は南へ向かったが、釘崎だけは北へ向かっていた。
こうした思いの差が、釘崎復活につながったと考えられる。
芥見先生は「1人助かって3人死ぬ」ルートを考えていたことを踏まえると、奇跡の生還であったことは間違いない。
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