都合の良さを受け入れる
マモちゃんがテルちゃんを「都合のいい女」として扱う一方で、テルちゃんも「都合のいい女」になろうとしているというのも事実である。
風邪をひいてしまったからウチに来て欲しいという頼みも、「仕事から帰るタイミングだったら」という前置きがあった。のんびりと自宅で過ごしてはいたが、「ちょうど会社から帰るところ」と嘘をつきマモちゃんの家へと向かった。
またご飯に誘われたとき、すでにカップラーメンを食べ、お風呂の途中(シャンプー中)ではあったが、「ちょうど今帰ってご飯も食べてない」と嘘をつきマモちゃんと合流する。
求められたら求められた形で返す。
綺麗な言葉を使えばそれは「思いやり」であり「優しさ」であり「親切」である。
しかし、常に自分が求めた形で返ってくるとわかってしまうと、それを利用する人間がいる。
そうした人の温かい部分を一方的に搾取することもあるのだ。
「そんな風に言いなりになっていると関係性が決まっちゃうよ。向こうどんどんつけあがるよ」
©2019 映画「愛がなんだ」製作委員会
ヨウコが警鐘を鳴らしているように、マモちゃんは次々と要求するようになる。
加えて、「マモちゃんが求めればテルちゃんはなんでも応えてくれる」という関係性ができあがってしまっている。
それは決して対等な関係ではない。彼女に発展などできやしないのである。
ただテルちゃんもその状況に満足している。
マモちゃんは自分のタイミングで、自分の都合の良いときに求めるというズルいやりかたをしている。しかしテルちゃんがその要望に応えてしまうことで、マモちゃんはそれに甘えているのもまた事実なのである。
「都合よく扱うこと」「都合よく扱われること」に2人は満足しており、共依存的な関係性なのである。
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