世界からの脱却
音楽大学に進みたいという自分の意思を理解してもらえないルビー。
その最中、ケンカ中のマイルズから「なんでもするから許してほしい」と連絡がある。
そのメッセージを受け取ったルビーは、秘密の湖へとマイルズを誘う。
自分しか知らない場所へ彼を呼び込んだということで、マイルズが「自分の居場所」へと昇華する前兆であった。
「音のある世界」「音のない世界」という二つの世界に挟まれていたルビーは、その2つの世界からの脱却を試みたのだ。
それが音楽大学への進学であったし、マイルズという心の拠り所を求めたのだった。
マイルズとの時間を過ごしたことで、ルビーは監視員が初搭乗する日の漁をサボることとなる。
その結果、耳が聞こえない状態での運転は危険と判断され船舶免許の停止が言い渡される。
漁業の再開のためには聴者の乗船が必須と宣告される。
生活のために船を売ると話す父。しかし、ルビーは家族のために働くと宣言する。
この船舶免許の停止をきっかけに、ルビーは音楽大学への進学をあきらめ、漁業に専念=家族の耳となることを決意する。
母の本心
その晩、母・ジャッキーは将来についてルビーと話す機会を求める。
ルビーが漁業をするということに対し兄・レオはいい顔をしていないことについて母・ジャッキーはのけ者にされたとレオが感じているせいと述べる。
「いつも3人一緒で私だけ別だった」
その言葉に対し頷く母。
「音のない世界」で生きる人に近づくことはできても、本当の意味で理解することはできない。
そのため序盤で話したように、ルビーと家族の間には見えない壁が存在していた。
また母・ジャッキーは自分と母が希薄な関係だったことから、娘が聴者であることを望んでいなかった。
分かり合えるかが不安で仕方なかったという胸の内を明かす。
ただぎこちなく不器用ながらもルビーと家族は通じていた部分があったように思える。
一方、兄・レオはルビーが将来の夢を諦め、家族の犠牲になることに怒っていた。
家族とともにいることで永遠に頼られてしまうことを危惧していた。
「お前が生まれるまで家族は平和だった」
この言葉はあながち嘘ではないのだと思う。
母・ジャッキーは特に顕著だったが「音のある世界」「音のない世界」をはっきり二分化させていた。
良くも悪くも「音のある世界」とは隔絶されていたのだ。
しかしルビーが生まれたことにより、「音のある世界」「音のない世界」が繋がってしまった。
もう関わることがないと諦め、離れていた世界との縁ができたのである。
「音のない世界」として家族の内輪で閉ざされたものが「音のある世界」と繋がるきっかけとなってしまったのだ。
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