【感想・レビュー】『コーダ ~あいのうた~』①音のある/ない世界【ネタバレあり】

映画

コンサート

 その後、V先生主催のコンサートへ家族が招待される。

 もちろんルビーの歌が聞こえることはない。歌の最中に夕飯の話なんかしたりする。

 唇の動きが読めない以上、ただ見ていることしかできない

 そんな姿はおそらくルビーの目にもとまっていたはずだ。

 ただそれでもルビーの歌を聴こうとした。観客の表情からどんな歌なのか、どんな声なのか、そしてどんな評価なのかを汲み取ろうとしたのである。

 この晩、父はルビーに、自分のために歌うように求める。

 ルビーの表情や喉の震えから彼女の歌声や想いを汲み取ろうとしたのだ。

 さてここでこれまでの関係性を振り返ろう。

 先ほど述べたように、ルビーが生まれるまでの家族は「音のない世界」で閉鎖的に生きてきた

 しかし、ルビーという聴者が生まれたことで「音のある世界」との繋がりが生まれた。

 それからというもの、ルビーは「音のある世界」と「音のない世界」を繋ぐ架け橋を担っていた。

 一方で家族一同、特に母のジャッキーは「音のある世界」を自分とは関係ない世界だと距離を空けるスタンスは変わりなかった。

 だが今回、ルビーのコンサートに参加することを通じて初めて「音のある世界」を中心とした空間に触れる

 それだけ見ていたら退屈なものだったろう。事実、途中からは今日の献立について話すなど集中できていない。いやそれが当然だと思う。

 自分には関係ない世界で、それをわかる世界の人だけが楽しんでいるのだ。

それでも今回は「音のある世界」に近づこうとしたのである。

「音のある世界」と「音のない世界」を繋ぐルビーという構図から、ルビーが生きる「音のある世界」がどんな世界か知ろうと、解明しようと歩み寄ったのだ。 

 今まではルビーが一方的に、無理やり繋いでいた世界であったが家族のほうから歩みを進めたのである。

 完全には理解できないかもしれない。それでも少しは歩み寄り分かり合うことができると感じた結果、家族一同でルビーの受験を応援する意思が固まる。

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