父の死との向き合い方
この作品の良いところは父の死ときちんと向き合っているという点である。
ここでいう「向き合う」とは父の幻影に捕らわれているということではなく、父の背中を見つつも自分の足で歩もうとする姿勢のことを示す。
聖輔は自分のルーツを探るため、わずかな記憶を手掛かりに父の元職場を探しに行く。そこでは当時のオーナーや同僚と出会うことができる。
そこでは淡々と話を聞くに留まっているのである。決して、父を理想像として捉えず、あくまでもルーツを探るにすぎない。
聖輔は聖輔としての夢を抱き、あくまでも「あるかもしれない将来の姿」としてみていたのである。
自分の意思で道を切り開こうとする力強さにはやはり魅かれる。
まとめ
人との縁を大切にしようとしたこの人情味あふれる、愛に満ちた作品が素直に好きだ。
絶望があっても、そこが終わりではないと訴えかけてくれる、若者の兆しとなる小説では七位だろうか。
生きる指標を見失った時、もう一度見返したい小説である。
コメント