羂索と戦うということ
羂索に勝つためにはそれ相応の実力でなければならない。
特級術師である九十九と脹相相手でも勝てなかったのは、先ほど挙げたように数の暴力と、複数の術式と経験と知識という、術師として持つべきものをほとんど持ち合わせている。
術師として戦うことは非常にリスクがあるということはわかっただろう。
特級術師レベルでも負ける可能性が十二分にあるのだ。
それは例え、五条悟に次ぐ術師と言われている乙骨や、伏黒甚爾と同格になった禪院真希ですら敗北することは考えられる。
ましてや今、現状でまず勝たなくてはいけない相手は宿儺である。
史上最強である宿儺が相手であるからこそ、五条悟が負けたときの保険として乙骨や真希は強いカードとして残しておきたいというのが高専側の本音であろう。
ギリギリまで追い詰めて逃すということだけは絶対に避けなくてはいけない。
また宿儺を倒しきれないということは五条悟が敗北した時、すなわち五条悟が戦闘不能になったときである。
五条悟が倒しきれなかった場合であるが、もちろん五条より強いことが確約される。
現代最強の呪術師が削りに削ったタイミングを逃せば、次回以降に宿儺を倒せる確率はほぼ皆無に等しいだろう。
そうなれば安易に主力である乙骨や真希を手放すわけにはいかない。
術式の違い
さてこうした高専側の事情というのもありつつ、高羽が選ばれた理由として彼の術式が羂索との相性がいいということがある。
彼が持つ術式「超人」は作中でも「高羽が”ウケる”と確信した想像を実現させる五条悟にも対抗出来うる術式」である。
これは術式のなかでも非常に特異な部類である。
術式の対象が自分自身であるため、高羽本人のメンタリティや状態にひどく依存する。
その一方で、術式における制限がほとんどないといってもいい。
例えば狗巻棘の呪言は「呪力を言葉に載せて相手に放つ」というものである。
すなわち言葉を発する必要があり、酷使すると呪力云々より喉に限界が訪れる。
また東条葵の「不義遊戯」は「手を叩くことが初条件となり、呪力を持つものとの居場所を入れ替える」という術式である。
ただし、真人戦で自らの腕を切り落としてしまい、「不義遊戯」は使用不可となってしまった。
これらのように、術式には身体的な制約が存在するものが多く存在する。
一種の「縛り」として機能している部分もあるだろうが、発動条件が限られるというデメリットもある。
あるいは「呪霊操術」や「十種影法術」のように呪霊や式神などを召喚するケースもある。
これらはいったん別の場所から術式使用時に召喚するという仕組みであるが、使役できる数や量に限りが存在する。
また「無下限呪術」をはじめ、漏湖や陀艮、花御などは呪力を別の性質に変えて出力をしている。
ただし、これらも術式によって出力先が設定されていて、”出力先の制限”があるといえるだろう。
五条は呪力を電気、術式を家電と例えていたが、呪力を込めた際に無限や火、植物など出力の方向性は決まっている。
シンプルだからこそ火力が強いが、汎用性という観点で考えると少し足りない部分はある。
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