【映画感想】『ジョー・ブラックをよろしく』【考察・レビュー】

映画

ジョーとスーザンの関係性

 ジョーとスーザンの関係性についても触れておかなくてはいけない。

 もともとスーザンと「彼」はコーヒーショップで出会ったことがきっかけであった。

 そこから話が弾み、お互いの周波数が完ぺきというくらいに一致していた。

 こうした明確なきっかけを経てスーザンは「彼」に恋をする。

 対してジョーはどうだろうか?

 一番最初の食事会では敵意はみせないものの、人間に対してさほど親しみを抱いている様子はなかった。

 本当に興味の対象程度に捉えていたことだろう。

 ただスーザンが”彼”に恋をしており、好意を一方的に受ける身でもあった。

 求められたからこ恋に発展する。確かに大きなきっかけではある。

 ただしこれが純然たる恋愛映画であれば、の話である。

 確かに孤独を癒し、愛で包み込む行為は素晴らしい。

 しかし本作のテーマは「人間と死神の恋愛」である。

 同じ人間ではないのだから当然価値観が変わるはずであるし、人が抱く感情とはまた別のものが生まれるはず。

 先ほども触れたが、そうした価値観や心情にはほとんど触れられないまま2時間が経過する

 タイムリミットが迫ることでの焦り、スーザンを連れていきたいという願望が登場するのは終盤も終盤。

 ここでようやく感情を獲得するということが描かれ、孤独を避けたいジョーに共感できるポイントが生まれる。

 ただやはり、2時間近く過去がわからず死神としての立場が不明瞭である点、そして自らの感情や想いを吐露しないという部分を考えると共感ポイントが薄まってしまう。

 想像力を視聴者側に一任しすぎているともいえる。

 ジョーに対しての感情が抱きにくいため、物語に入り込める隙が無いのだ。

 ジョーが持つ過去・心情や生活、感性、そして価値観を示唆するようなヒントがもっと欲しかったなと思う。

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