伏線を時間差で回収する
この伏線を時間差で回収できる、という点も面白い。
もちろん他作品も伏線回収というものはある。しかし、時に伏線回収するためだけに回想に突入したり、不自然な時間軸に飛ぶこともあるのが事実。
照夫の誕生日である「7/26」同じ日付を繰り返すということでこの時間を遡る・進むことによる不自然さを解消できる。そのため回想に入る・状況説明をするという違和感を抑えることが可能になっている。
さてこの時間差による伏線回収の象徴的な例は「バレッタ」であろう。
このバレッタは作中でいうと2年目、猫が部屋を荒らしたときに発掘されたものである。
明らかに伏線であることを匂わせる演出がされてるが、その詳細は照夫の口から語られることはない。
実際、このバレッタについて床屋の店員に聞かれても照夫は答えない。
このバレッタについては詳細が判明したのは4年目、照夫と葉ちゃんが付き合っているころに遡る。葉ちゃんが誕生日プレゼントにと寝ている間に照夫の枕元においていたものであることがわかる。
「7/26」という日付に注目している作品であると述べたが、照夫と葉ちゃんにフォーカスをあてているだけであくまでも365日の1日であろうとしている。
そのため照夫や葉ちゃんが状況説明をするという形をとることはない。心境の変化や過去の繋がりを「話し」として自分語りせず、代わりに「日常」の一部となるよう「映像」として状況説明をしている。
言葉で語らず映像で語る、という手法を取っているため自分語りですべてが明かされるという不自然さはない。
むしろ映像でしか情報が説明されない、照夫と葉ちゃんの過去に何があったのかが少しずつしか明らかにならない。だからこそ続きがどうも気になってしまうし、ある種ミステリ―映画の読み解きの要素があって面白い。
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