【感想・レビュー】『2.43清陰高校男子バレー部』第5話 【責任と無責任】

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失ったもの③ 先輩たちの最後のチャンス

 3つめは先輩たちです。高校3年生の部活といったらよほどの強豪校でもない限り、IHなどが開催される6~8月あたりで引退します。小田たち清陰高校バレー部の3年は実績がない弱小校です。高校3年生で進学や就職を控えているのにもかかわらず、それでもバレーを続けるという選択をとりました。それもすべて「春高」という大舞台に立つことを夢に見ていたからです。まさに人生を賭けた選択であったことは間違いありません。ユニがとった行動は、人生を賭けた選択をした先輩たちの夢を打ち砕くものだったというのは間違いありません。

失ったもの④ チカの期待

 もともとチカは高校でバレーを続ける気はありませんでした。これにはいくつか理由が考えられます。バレーをするための人間関係に疲れた、高校のバレー部にユニが入っていた、清陰高校バレー部が強くなかったことが主な理由かと思います。それでも全国大会出場という揺るぎない目標があること、そしてユニが戻ってきてほしいと願ったことからバレーを再開することを決めました。その部活に誘ったユニが全国出場の夢を壊してしまうのですから、チカはショックを受けること間違いありません。

  ユニが守ろうとしたものとは

 さて、ユニだけではなく様々な人の想いが込められた春高本選出場の夢。これを捨ててまでユニが守りたかったものは何でしょうか。それは絃子の存在でした。自分の頬を殴ったのは絃子なので、事件として巻き込みたくなかったらしいのです。

 しかし、ここの行動に納得がいきません。ユニにとって絃子が大切な存在であることはある程度描かれていました。そんな彼女を守りたいという気持ちは理解できます。ただ問題となるのは「真実を明かすことにより絃子が受けてしまう制裁」と「ユニのバレー人生」「ヨリちゃんの想い」「先輩たちの最後のチャンス」「チカの期待」が本当に釣り合っているのかという点です。

 仮に絃子が退学・停学処分になってしまうだとか、学校中からいじめられてしまうというのなら、庇う気持ちは理解できます。しかし、絃子がそのような仕打ちを受けるとは考えられません。ただの痴話喧嘩でユニを殴ってしまっただけなのですから、処分や制裁を受けることはないでしょう。することといったら学校側に「ユニは悪くありません。私がケガさせただけです」とひと言謝る程度だと考えられます。むしろバレー部の活動存続、またユニの疑いを晴らすためであれば、絃子は謝ることぐらい躊躇しないでしょう。

 つまりユニ絃子を庇う理由が全くと言っていいほど見当たらないのです。加え、先に挙げたユニのバレー人生」「ヨリちゃんの想い」「先輩たちの最後のチャンス」「チカの期待」を捨ててまでの絃子を守りたい理由が1㎜もありません。結果として、ユニは理由もなく様々な人の想いと夢を蔑ろにしたクズ野郎になってしまうわけなのです。本来であれば絃子を守ろうとするカッコよさや、バレーと交友関係に板挟みになる感じを演出をしたかったのかもしれません。しかし天秤として全く釣り合っていないがゆえ、不自然さが目立ち気持ち悪い展開になりました。

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