翼の選択
勇希が自ら残飯をかぶろうとする瞬間、翼はそれを止める。
「勇希を助ける」という選択をとったのだった。
あえてマイノリティーとなるということは今後の学校生活に響く以外にも、その場の「状況」もある。
調子に乗っていたいじめの首謀者へと標的が変わった中で、誰もが転落ぶりを期待していた。
特に「いじめられた側の翼」と「いじめていた側の勇希」の立場が入れ変わったことを喜んでいたようにも見える。
「クラスのいじめっ子が誰もが自ら残飯を被る・あるいは翼から残飯をかけられる」という惨めな姿を待ち望んでいた。
いじめを楽しむ彼らからの「早くしろ」という同調圧力は凄まじいものだろう。
先に説明したように、マジョリティに従うべきという翼の立場もある。
理論的に考えれば「勇希をいじめる立場」のほうが楽であり安泰なのだ。
それを跳ね除け、翼は勇希の味方をするという立場を選ぶのであった。
ただ翼には勇希との思い出は残っていないはずだ。
だから自分が勇希を知らず知らずのうちに救っていたことや、親友であったことは覚えていない。
それにも関わらず「自分を守る」という保守的な考えを捨て、「勇希の味方をする」という不確かなものを手に取ろうとする。
当然ながらリスクが高いことは間違いない。再びいじめの標的になるかもしれないし、クラスでの立場は再び危うくなるだろう。
そんな状況でも助けたということは、翼には勇希を救わなくてはならないという気持ちと覚悟が残っていたのだと考える。
翼が記憶を失う以前から勇希のことは特別に思っていたことは間違いない。
家庭環境が悪化し精神的に崩壊、自室に「死」とひたすら書き込むほどの病み具合であっても勇希との2ショットを捨てることができなかったのだと思う。
断片的な記憶しか残っていなくとも、勇希との思い出は心に刻まれていた。
かすかな思い出をどうにか信じた結果、勇希を助けるという行動に繋がったのだろう。
「友情」を感じられる話であり、話の終わり自体も温かみのある終わり方をされていた。
まだまだ「一ノ瀬家」には不安要素・怖い部分はあるが、ハートフルに期待はしていきたいと思う。
次回、第6話の記事↓
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