”大人”と対峙する夏油と五条
そんな二人がぶつかるのは禪院甚爾という存在である。
「まぁ大丈夫でしょ。俺達最強だし」「私たちは最強なんだ」
このセリフにみられるように五条は自分たちの才能を核心に近いほど信じていた。
事実として、後の二人は呪術界の最高峰である「特級」というクラスまで上り詰めたので自己評価は間違いではなかっただろう。
ただそれは青春が見せた幻覚であり、厳しい現実をみせる結果となる。
それが禪院甚爾という存在である。
まずは大人というものは狡猾で用意周到ということだ。
五条と夏油はひたむきに護衛を務めていたが、それが正解とは限らない。
禪院甚爾は金と人脈にモノを言わせ、自由に動くことによって戦局を優位に立つことができた。
それは五条や夏油がみてきた世界とは異なる“大人の勝負”なのだ。
綺麗な勝ち方に拘らず、勝てばいい結果だけがすべてという世界。
そして2つ目にぶつかったことは、死という不可逆な事実である。
高校3年時には特級相当までの実力を身に付けたということで、高校2年時には1級や準1級相当の実力はあったことだろう。
おそらくだが、五条や夏油はこれまでの人生において“何とかなってきた”節があるように感じる。
自分の手が届く世界の人間は救ってきただろうし、大事な人はたくさん守れてきたと思うのだ。
それは彼らが才能に恵まれていたからであるし、壁に阻まれることはなかったからだ。
しかし、今回はそれとは一味違う。
天内リコという消えゆくことを覚悟した人間と3日間と最後の時間を共にした。
彼女の生き様、表情、その躍動を一番近くで見てきたし、生きるということに直面していた。
そんな彼女に対し、五条と夏油は感情移入をしてしまう。
生きてほしいと切に願ってしまったのだ。
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