2つ目に学生として楽しくやれていたことが、責任ある一人の大人としての対応を求められるようになってしまったのであった。
仲良くワイワイといったみんなで楽しくという世界からは遠ざかり、自分の役割に従って淡々と仕事をすることを求められるようになった。
友人という立場からビジネスライクを求められだしたのである。
九十九が高専を訪れたタイミングで五条がいないことからも、高専後期に3人が共に過ごせた時間は少ないように思える。
その中で夏油は精神的な乖離を実感してしまったことが大きな原因である。
そして3つ目に五条悟が覚醒したという要因も考えられる。
2人で最強とずっと言い続けてきた五条と夏油であったが、禪院甚爾との戦闘を経て五条は覚醒を果たす。
反転術式を使えるようになり、無下限術術を常に展開できるようになり、五条は文字通り「最強」となった。
それまでは五条と夏油が2人でいることで「最強」であったのに、五条はたったひとりで呪術界の「最強」を名乗れるようになってしまったのである。
この開いてしまった才能の差をと呪術界という世界のギャップに夏油は耐えることができなかった。
結果、五条とは自分の中で勝手に折り合いをつけ、線引きを行ったのであった。
これが星漿体事件の前後で発生した「さしす」の変化である。
もちろん、これらのほかにも呪術界で当たり前に横行している惨状を目の当たりにし、それを当事者として考えるようになった夏油は人一倍苦しい思いをしていたということもある。
しかし、より重要な点は「さしす」の三人が同じ道を歩むことができなかったという事実である。
その結果として、親友であった夏油の心の内を知ることなく、一般人の大量虐殺という報告によって夏油が望んでいた世界を知ることになった。
たらればの話でしかないが、もしも夏油が感じてしまった孤独に対して五条や家入が気づいていれば、もしも夏油の”魂”の行く末を感じ取っていれば話は大きく変わっていただろう。
そういう意味において、夏油の離反は3者が互いに行うべき”魂”の観測が足りなかったがために起こった事件と言ってもいい。
3つの魂が互いに観測し合うというのは、こうした「さしす」組の悲劇を揶揄しているようにも聞こえるし、虎杖・伏黒・釘崎の「植物」組がこうならないようにすべきという警告であるようにも見て取れる。
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