【2020年本屋大賞】『ライオンのおやつ』作:小川糸【書評・感想】

小説

あらすじ

 33歳という年齢にして余命を宣告されてしまった海野雫は、瀬戸内にあるレモン島のホスピス「ライオンの家」で余生を過ごすことを決める。

 「ライオンの家」では毎週日曜日には宿泊者の中のリクエストを受け、思い出のおやつを食べる「おやつの時間」が設けられている。

 何を食べるか決めきれないまま、雫の時間は過ぎ去っていく。

 豊かな自然と職員に囲まれて幸せな生活を営むが、雫に残された時間は限られ、生命すら蝕んでいく。

 その中でも「死」と向き合い、そして生きることを考える。

 儚くも強くあろうとする最後の時間を描いた一作。

書評・感想

 必死になって日々を生き抜いてきた私であるが今年で齢25を迎える。

 客観的にみてもこの20代~30代前半というのは人生における大きな分岐点である。

 就職・転勤・転職など仕事にまつわる話もあれば、結婚というワードもすごく身近に感じるようになった。

 学生時代の同級生や先輩もちらほらと結婚し始め、披露宴を開催という話も耳にする。

 子供が欲しいかどうかという部分で考えると、結婚する・しないを決める一つの指標ではある。

 そのような将来を自分自身で決定しなくてはならない転機が訪れるというのが20~30代前半という時期にあたりだ。

 しかしそういう話ばかりではない。

 死という存在が身近になり始めるのもこのあたりの年齢である。

 子供のころでも親戚であったり知り合いが亡くなるケースは当然ある。

 ただ関係性が浅い人であったり、リアリティを感じない。どこか遠い話に聞こえていた。

 この時期に「死」を迎える人物はある程度の年数を共有している分の重みをどうしても感じてしまう。

 あるいは自分の死というものも考えてしまう時期でもある。

 死ぬときに看取る人がいるかどうかという部分は結婚というワードとの関連性が強い。

 とりわけ情報社会となった昨今、電子上とは言え手軽にニュースを摂取できるようになり、孤独死や病気などの情報をよく目にする。

 そういう意味でも、20代~30代前半は死や将来について深く考える時期であるといえるだろう。

 本作『ライオンのおやつ』は死を直前に控えた女性・海野雫の生き様を綴った話である。 

 私ながらの感想としてここの記録しようと思う。

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