【感想/レビュー】『一ノ瀬家の大罪』「美奈子の消失」【第15話考察】タイザン5

一ノ瀬家の大罪

 『一ノ瀬家の大罪』15話について今回は見ていく。

 前回の話は↓からどうぞ。

考察

 『本物の翔』が訪れた浮気相手の家へ押しかける翼と美奈子。

 美奈子はついインターホンを押すが、ことが大きくなる前にその場から逃走する。

 様子の異変を感じ取った翼が問いかけると、『本物の翔』が不倫していたことを話す。

 翼が思い出さなくてはいけないと固い意志を持つ一方、美奈子は公園でみかけた不倫相手の息子・けんたに話しかける。

美奈子の企みと翔の存在

 第14話「美奈子の告白」から怪しげな雰囲気であったが、美奈子は不倫相手の息子・けんたを誘拐しようと画策していた。

 その真っ只中、けんたと手を繋ぎ歩いているところを翔に見られてしまう。

 焦る美奈子に対し、翔はストレートに「ありがとう」とお礼をする。

 まず一つ目のポイントは美奈子がけんた達が住むアパート付近を訪れていたという点だ。

「この子供を殺せば全部ぶち壊しにできる。そうしたらあいつは」

『一ノ瀬家の大罪』15話「美奈子の消失」

 このように、けんたを殺害することにより不倫をしたことに対する復讐を果たそうとしていたことは間違いない。

 また誘拐・殺人と犯罪の中でもかなり非人道的な行為を計画していた。

 一方で上記の言葉に続く「翔さんはーー」というセリフから、翔に対して正しく愛情を持ち合わせていたことが伺える。

 愚鈍であり仕事もままならず、そんな不安定ながら不倫に及んだこと許すことができなかったがゆえ復讐を望んでいた。

 しかし、その愚直さに惹かれたという事実と、自分が翔を一人の人間として台頭に接することができなかった自責の念が混ざってもいた。

 憎悪だけではなく愛情もあったからこそ誘拐・殺害という行為に知らずともブレーキがかかっていたのだろう。

 道を知らなかったため、たまたまアパートに辿りついたのでは決してないだろう。

 愛憎という二つの感情で揺らぎ、そして犯罪に手を染めるという不可逆性が深層心理に作用した結果、本人が知らないところで足が勝手にアパートへと向かっていたのだ。


 そして美奈子がなぜ結婚したのかという部分にも着目したい。

 13話「美奈子の追憶」では美奈子が翔の不倫現場を目撃する。

 そこでは翔がリストラにあったこと、プライドもなくアルバイトを始めたこと、自分の子供に言い返せないこと、実家を出られないこと、貧乏臭くて安っぽいものが好きなところと美奈子の不満が綴られていた。

 それでいて翔に優しく接していたかといえばそうではない。むしろ冷たい態度をとっていた。

 ただそうした状況のなか、美奈子は離婚という道をおそらく選んでいない

 今回同様、けんたの誘拐という部分に目を向けていた。

 多くの不満を抱えていたにもかかわらず、直接的に関係性を破綻させる離婚という手段を取らなかった理由は何か?

 それは翔のことを愛していたという事実があったからであると考えられる。

 オドオドして頼りはないものの、その純粋で疑わない愚直さが好きでもあったのだ。

 だから離婚という関係性を瓦解させる手段ではなく、自分自身に気持ちを取り戻してほしいと願っていたのだろう。

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