詩織について
第6話ではっきりしたことと言えば、詩織が翼を避けているということだ。
第2話では同じ中学という不安を抱えているのにもかかわらず、よそよそしく一人で学校に向かう。
今回の第6話では翼を見た途端、「げ」という言葉が漏れてしまっている。
このことより、詩織は翼と会いたくないという本音があることは間違いないだろう。
ではなぜ詩織は翼を避けているのか。
それは「危機感の差」と「秘密主義」の2点があると考える。
危機感の差
まずは「危機感の差」という部分だ。
これについては第1話の時点でもう話されていたことである。
翼は記憶が戻らないことには楽観的であった。
家族とすぐに打ち解け、「架空の思い出トーク」と遊び感覚で記憶を取り戻そうとしている。
一方の詩織は記憶が戻らないことに対してかなり危機感を覚えている。
そのため「架空の思い出トーク」という楽しい記憶の取り戻し方に納得ができていなかった。
しかし翼の提案に賛成する家族一同をみて、その場から逃げ出してしまう。
病院の屋上にて翼と二人で話す時には、その不安を吐露しながら涙する。
とにかく不安でしかない詩織に向かって「別によくね?記憶戻んなくても」と、記憶喪失を重くとらえてはない。
むしろ記憶が無くても家族と楽しい時間があることを喜んでいるようだった。
翼の気楽さに救われた詩織は、このタイミングをきっかけに家族と関わりだす。
しかし自宅に帰ることを転機にして家族の関係、詩織の思いも変わる。
第2話から詩織を含めて家族同士を避けるようになる。
第6話ではおよそ1週間ぶりに翼と詩織が顔を合わせる。
第1話でみせた距離感のまま詩織に話しかけるがかえって怒られてしまう。
「ふざけないでよ。
私は毎日記憶を取り戻すために頑張ってるの!
のんきな翼くんと違って!」
『一ノ瀬家の大罪』第6話
第1話で入院中の時には翼に感化され記憶が戻らなくても良いとの考えが、おそらく自室を見たことで「一刻も早く記憶を取り戻したい」という姿勢に戻ったのだろう。
そんな状態の中で、翼が記憶を戻すことを気にせず日常会話をしようとしていることが許せなかったのだ。
詩織が翼を敬遠していたのはこうした危機感の差もあるだろう。
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