中嶋といじめ
ここで注目したい点はなぜ翼をいじめるかという部分である。
まず中嶋勇希とそれ以外でそれぞれいじめを行った理由を見ていく。
まず中嶋がいじめを開始した理由は第4話の回想にて明らかになる。
詳細については第4話の記事↓にまとめております。
もともと小学校時代の中嶋勇希は根暗な人物であり、両親が性格や気質を心配するほどであった。
父がサッカー好きということからサッカー関連のグッズを身につけていた中嶋は、そのことをきっかけに翼に話しかけられる。
パスセンスを褒められた中嶋は翼たちが加入している南小FCに加入し、これを契機に中嶋は変わり始める。
南小FCではエースナンバー10番を背負い、MVPに選出されケーブルテレビの取材を受けるほどサッカーが上手かった翼。
そんなスクールカーストトップに位置するだろう人物に評価され、「相棒」と呼ばれ、そして中学では一緒にレギュラーを目指そうとまで声をかけられる。
中嶋としては承認欲求を満たされることは間違いない。
ただ中嶋は決してサッカーが上手くはなかった。
南小FCでは27番と高くはない背番号を身に付けていたし、「翼に気に入られていただけ」「翼がいなけりゃあんなもんでしょ」と周りからも厳しい評価を受けていた。
そんな中でも必死に努力した末、レギュラーを掴み取ることに成功する。
ただ中嶋はサッカーという競技が好きなわけではなかった。
「別に好きだったことなんてなかった」
『一ノ瀬家の大罪』第4話 タイザン5
ではなぜ初めから才能があるわけではなかったサッカーをひたすらに続け、レギュラーを目指していたのか。
それは「サッカーが居場所」となっていたからだろう。
サッカーを続けることで他者から認めてもらえるのだ。
FCの中心人物である翼には実力を褒められ、両親もサッカーを始めたこと変化を喜んでいる。
周囲の人物からの評価もあるが、中嶋にとって「サッカーが居場所」となっていたということもあると思う。
彼自身にとってサッカーが精神的支柱になっていたに違いない。
だからこそ、「中学でレギュラーになる」という目標に対し、一身に進んでいったのだろう。
大げさに話すと、翼と約束した「中学でレギュラーになる」ということが中嶋にとっての人生の意義になったようなものであると考える。
中嶋はレギュラーを落ちてしまったのは、もちろん語られてきたように実力が伴っていなかったのかもしれない。
ただ翼が約束を忘れてしまったと答えたことで、サッカーに対する熱量が冷めたことにも由来するのではないかと考える。
さて話を戻そう。
中嶋はこのように翼を尊敬し、彼の進む道を追従していた。
そしてサッカーが居場所であった中嶋勇希は、翼が約束を忘れたことを許すことができなかった。
だからこそ記憶喪失となった翼に対して「すぐ忘れるところとか」と嫌味たっぷりと言葉を送る。
翼を許すことができなかったため、中嶋勇希はいじめをするに至る。
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