取巻きによるいじめ
中嶋勇希は翼に対する恨みからいじめをするに至った。
では取り巻き達はなぜいじめに加担しているのだろうか?
それは「いじめをエンタメ」と捉えているからである。
まずは先ほども述べているように取り巻きであるヘアバンド・金髪チャラ男・七三はいじめの傍観者であろうとしていた。
それは訴えられた時に加害者になることを避けるためであると思われるが、あくまでエンタメとしてみていたということもあるだろう。
例えば、いじめの様子を常に撮影しているという点だ。
翼が記憶喪失後に初めて学校に投稿してからというもの、七三が登場するコマでは常にスマホを握っている。
そしてそのカメラは常に翼を捉えている。
実的被害を与えず、あえて映像に残そうとしているということは、いじめを記録することで後で見返しいつでも嘲笑う準備のために思える。
そしていつ如何なる事件が起きようとも、その瞬間を見逃さないという強い意志・エンタメ力を感じる。
より正確な言葉を考えると「翼が苦しんでいる姿が見たい」というよりも「自分より弱い誰かが苦しんでいる姿」が見たいように感じる。
だからこそ翼の過去には興味がない。
第3話からは翼にとってかわり中嶋勇希がいじめの対象となった。
翼も中嶋のいじめに加担するも、断片的な記憶と部屋に置いてあったツーショットからいじめをやめようと話す。
しかしクラスメイト、特に取り巻きの3人はいじめをやめることに全く興味を示さなかった。
「知らねーし、マジでそんなん…。お前の記憶喪失語り興味ないから。
面白そうだから付き合ってやったのに、何か冷めたわ。
そういうのいいから…。お前ら2人気持ち悪~」
『一ノ瀬家の大罪』第5話 タイザン5
ここで「面白そうだから付き合ってやった」と明言しているように、翼や中嶋といじめに加担していたのは「面白さ」を求めているからだ。
つまりは「いじめはエンタメ」として捉えているのだ。
だからこそ翼がサッカーを辞めたとしても、その内情については一切興味を持たない。
本当の友達であれば苦しい時こそ手を差し伸べるだろう。
ただ七三や金髪チャラ男はサッカーを辞めた理由に興味を持たず、「面白いかどうか」で翼たちを判断していた。
このいじめについての指標は「約束を忘れられた」という個人的恨みがあり、攻撃の理由がはっきり中嶋とは対極に位置する。
一緒にいたらスクールカーストを維持できる、といった薄っぺらい関係性でしかなかった。
「一ノ瀬、最近なんか暗くね」
「わかる~。あいついると空気悪くなるわ」
「もう放っとこ」
『一ノ瀬の大罪』第5話 タイザン5
このように翼に寄り添う行動はとってはいない。
自分の利益と保身に努める強情で薄情な人物である。
だから残飯をかける行為はある種のショーであり遊びの一環なのだ。
そのため、エンタメにリスクを背負いたくはないのだろう。
いじめの直接的な加害者になりたがらない理由はここにあると思う。
外野から人が苦しむ姿を楽しめればそれで充分であるのだ。
だからこそ長いものに巻かれるという精神も身についているように思う。
第3話にていじめられていた翼が中嶋に強く言い返した際、その一部始終を収めた動画が広まることとなる。
サッカー部の先輩が喜んだという理由で、いじめの標的を翼から中嶋に変わる。
崇高な精神も明確な恨みも、とびきりな嫌悪感もない。
確固たる意志も感情あるわけでもないからいじめの標的を変えることができたのだと思う。
こういう点も中嶋のいじめとは異なる点である。
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