”呪霊操術”と術師
さて私が今回、気になっている部分は”呪霊操術”を持つ術師が亡くなった場合、どのような影響が現れるのかという部分である。
この疑問を抱いた理由は伏黒甚爾のセリフである。
「術師なら死なねぇ程度に斬った。
式神使いなら殺したが、呪霊操術となるとな。
オマエの死後取り込んでた呪霊がどうなるか分からん。
ここで面倒事は避けたい」
『呪術廻戦』9巻 第73話「懐玉-玖-」
これは星漿体である天内理子が伏黒甚爾によって射殺され、夏油が応戦するも敗北した際のセリフである。
まずはこの発言を深堀りしてみようと思う。
初めにこの時に伏黒甚爾が夏油に対して止めを刺さなかった理由についてである。
前提として術師相手に止めを刺す場合には呪力を込める必要があるというところからみていこう。
「敵対術師に止めを刺す時、気をつけねばならんことは?加茂」
「はい。死後呪いに転ずることを防ぐために呪力で殺します」
『呪術廻戦』4巻 第33話「京都姉妹校交流会 -団体戦0-」
このように術師を殺害する場合には、呪力を込める必要性が説かれている。
実際に禪院直哉は真希の母親によって殺害=呪力を込められずして殺されたため呪霊となり、再び登場することとなる。
さて、”死滅回遊”編で直哉が復活した際に真希は次のような発言をしている。
”呪力のない私が拳で殺したんだ。
こうなることを想定しておくべきだった……‼”
『呪術廻戦』22巻 第192話「桜島結界②」
ここで”拳で”という発言をしているが、呪力を持たない真希でも拳以外であれば呪いに転ずることを防げるということを間接的に説明している。
自分自身で呪力を練ることができなくとも、呪力をすでにもつ呪具で止めをさせば問題ないということだ。
例えば第1巻・六本木の廃ビルに潜む呪霊を祓う際、虎杖は呪力を持つ呪具”屠座魔”で戦闘を行った。
また”京都姉妹校交流会”編・花御との戦闘時では、東堂葵の術式”不義遊戯”の条件「一定以上の呪力を持ったモノ」の対象に特級呪具「游雲」も含まれていた。
このように呪具には呪力が込められており、呪力を扱えない者でも呪具を用いることで呪力での攻撃も可能となる。
このことを踏まえると、夏油を殺さなかった理由は死後呪いに転ずることを恐れていたからではないと見受けられる。
事実、伏黒甚爾は五条を殺した気でいたことからも術師を殺害することはそこまで問題ではなかったように思える。
つまり重要なのは、「”呪霊操術”という術式を持つ術師」か「式神使いの術師」かどうかという部分であったのだ。
式神使いは、術式で”召喚”するため術師本人が呪力を込める必要がある。
吉野順平と戦った時、「式神使いは術師本人を叩きな」という五条の言葉が登場するが、これは式神が術師の指示でのみ働くからと推察できる。
そのため式神使いの術師が亡くなった所で”召喚”に繋がることはなく、特に問題はないのだろう。
一方で”呪霊操術”は呪霊を術式の支配から外すこともできる。特級呪霊・黒柄死がその代表だ。
また媒介が不要であるため、いつでも呪霊を呼び出すことができる。
つまり伏黒甚爾が危惧しているように、夏油が亡くなった後に呪霊がどのような動きをするか想像が難しいということが式神使いと異なる点だ。
この時点で天内理子殺害という目的はすでに達成されており、夏油をダウンさせたい以上はリスクを負う必要性は特にない。
そのため夏油を殺さずに立ち去ったのであると考えられる。
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