③ それぞれの役割について
3つ目に”簡易領域”と”領域展延”の役割についてである。
”領域展延”は術式を中和することを目的としているが、”簡易領域”に関してはイコールではない。
「死滅回游」の伏黒恵vsレジィ・スターでは次のようなナレーションが入っている。
「彌虚葛籠」や「簡易領域」は術式そのものを中和することはできない。
これらは術式の付与された結界を中和することで付与された術式の必中効果を無効化している
『呪術廻戦』19巻 第170話「東京第一結界⑩」
一方で与幸吉vs真人の際、羂索は下記のように語っている。
”領域”はあらゆる術式を中和する。領域内ではあの五条悟にですら攻撃は当たる
簡易とはいえ内側から領域を発生させられたら真人でも術式関係なくダメージを負う。
『呪術廻戦』10巻 第82話「宵祭り-参-」
”簡易領域”では術式の中和ができない、”領域”はあらゆる術式を中和すると、矛盾するような説明にみえてしまうため解説する。
基本的な概念として”領域”と名がつくものは術式の中和がベースとなる。
”領域展開”は自分の濃い”領域”でみたすことにより必中効果を得ることができる。
つまり相手の術式や呪力を中和した結果、必中効果に繋がっている。
「貴様の無限とやらもより濃い領域で中和してしまえば儂の術も届くのでだろう?」
『呪術廻戦』2巻 第14話「急襲」
そして”領域展延”も自分の身の回りを術式を付与しない領域を覆うことで相手の術式を中和しているのである。
この中和という観点については羂索の発言と矛盾はしていない。
そして”簡易領域”も術式の中和がベースとなっていることに変わりはない。
ではなぜ術式そのものを中和することができないと記載があるのだろうか。
それは”領域展開”をされた場合の対抗策として”簡易領域”が単純に出力不足であるからだ。
先ほどは漏湖の言葉を引用したが、領域はより濃いほうがその場を制する。
つまり本質的には”簡易領域”も術式を中和する能力があるものの、”領域展開”内ではその強度の差から術式の中和にまでは至れないと解釈している。
そもそもにして”簡易領域”は”領域展開”の術式を中和することは求められていない。
”簡易領域”は弱者のための領域である。そのため弱者でも利用できる汎用性と、現場にて有効であるだけの耐久度が求められていたはずだ。
当然、”領域展開”に対して一番有効な”領域展開”を繰り出す実力がない術師向けの技術。
そうなれば”簡易領域”に求められるものは”領域展開”を完全に耐えきる力ではなく、一矢報いる隙を確保することだろう。
そういう意味では”簡易領域”には領域を中和するだけの大きな出力は求められていないのである。
先ほど与幸吉vs真人の際には「簡易とはいえ内側から~」と述べているが、外側からであれば大きなダメージにならないであろうことも示唆され、出力が大きくないことが予想できる。
その結果、”簡易領域”は術式を中和するだけの大きなパフォーマンスではなく、結界を中和することで付与された術式の必中効果を無効化するという省エネ仕様へとなったと推測する。
このことより”簡易領域”も術式を中和する能力があるものの、”領域展開”内で発揮できる能力は限定的なのである。
しかし逆説的にであるが”領域展開”を用いない、通常の戦闘において”簡易領域”は術式を中和・軽減することも可能である。
「人外魔境新宿決戦」では宿儺の術式没収に失敗した日車が、宿儺の「解」によって切り刻まれるところを日下部の”簡易領域”が助けた。
宿儺自身が”簡易領域”にて術式が薄まったと述べていることからも、”簡易領域”で術式を中和とまではいかないが軽減することに成功している。
以上より”簡易領域”でも術式を中和する能力は持っていると考えられるだろう。
ただし、先ほども述べたように「簡易」であることから万全な防御ではないこと、”領域展延”と異なり移動ができないため、万能的な防御策ではないことには留意したい。
そのため通常戦闘の防御策としては”領域展延”のほうが有効であるはずだ。
確かに宿儺の猛攻を防ぐための策として日車が”領域展延”を使用する才能を開花させている。
しかし1級術師である冥冥が使用できず、日下部も使用できないと述べていることからも相当難しい技術であるといえるだろう。
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