七海の不幸
そんな七海にはいくつかの不幸があった。
初めに一つ上の先輩として五条と夏油がいたことだ。
五条家の麒麟児こと五条悟、術師の才能だけでなく肉弾戦もピカイチである夏油傑、反転術式をアウトプットできる希少な人物・家入硝子の3人。
特に五条・夏油に関して言えばのちの特級に選出されるなど、呪術界でもほんの一握り、いや片手で数えられるだけの実力者となる。
もちろん良き先輩・良き見本ではあるが、近くにいる存在としてはあまりに眩しすぎる。
本来であれば七海自体、呪術師としての才能に溢れている。
呪術師の多くが2級や準1級で生涯を終えることを考えると、現在1級術師である七海は呪術界でも才能に恵まれた人物といえる。
「簡単な式神とか結界術は別として基本的に術式は生まれながら体に刻まれるものだ。
だから呪術師の実力は才能がほぼ8割って感じなんだよねー」
『呪術廻戦』2巻 第12話「邁進」
学生時代1級に到達していたかは不明であるが、あの勤勉な性格からおそらく燻ってはおらず相応の実力者であったことは想像できる。
七海が呪術師への復帰を希望した際に五条が喜んでいたのは懐かしい後輩と再び仕事ができる喜びもあっただろうが、実力者としての信頼も持ち合わせていたからだろう。
推論でしかないが七海は高専時代より潜在能力の高さを発揮していたはずである。
呪術師としてトップクラスの才能があったにもかかわらず、七海の先輩には五条・夏油と特級術師が2人も存在する。
特級はおそらく1級のなかでもさらに一握りの才能がないとなることができないレベル。
もちろん七海は才能に加えて努力と研鑽で1級術師まで成り上がったはずだが、特級がもつ術式や呪術センスなどの才能は努力や研鑽の量をはるかに凌駕する。
特級の力を身近に感じれば感じるほど、本来はトップクラスである1級でも呪術師としての存在意義が揺らいでしまうことだろう。
詳しくは後述するが、七海が呪術師を一度辞めた理由として特級術師との実力差をまじまじと感じてしまったからということも含まれるだろう。
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