利用するだけの関係性
第8話では、ついにまりなの遺体が発見されます。
東くんは「思い出ボックス」に遺体に隠した本当の死亡時刻がわからないこと、指紋をふき取ったことから隠し通せると考えます。対してタコピーは、まりなの家族のことを考えて打ち明けることを提案します。
どうするべきかと苦慮する東くんに、しずかは作戦会議をしようと持ち掛けます。
もちろんそれどころではない状態ですから、東くんは東京進出を躊躇います。
「行けるよね。東くんが言ったんだよね。夏休みならいけるんだよね」
『タコピーの原罪』第8話 作:タイザン5
このセリフからもしずかの優先順位の圧倒的1位は「チャッピーと再会」であり、警察がどうとかまりなの遺体がどうとかは正直どうでもいいと考えているように見て取れます。
気持ちのいい期待感を与えられ、心が揺さぶられてしまった東くんはつい「うん」と返事をしてしまいます。
その期待に応えるべく、上手く隠し通しつつも夏休みの計画を立てていきます。しかし、そのことに時間を費やしたためテストで悪い点数を取ってしまう東くん。
その結果、母親から諦められ、見捨てられてしまいます。
そんなメンタルがすり減っている状態の東くんに声をかけたのはしずかでした。
「大丈夫?」
「うん…」
『タコピーの原罪』第8話 作:タイザン5
「認められたい存在」である母親に見捨てられた今、東くんに残っているのは自分を頼りにしてくれているしずかという存在。
だからこそ、東くんはしずかの期待に精いっぱい応えようとします。
「さっきまた、けいさつの人から電話かかってきて。夏休みまたけいさつ署行かなきゃいけなくて」
「うん…うんうん!」
「でも私夏休みはチャッピーのとこ行かなきゃだから行けないじゃん。つかまるのも困るし」
「うん!」
「だから代わりを」
「大丈夫!何でも言って!僕が全部解決してみせるよ!僕がどんなことをしてでも久世さんを助ける」
「ありがとう東くん。じゃあさ」
「これ持って自首してくれないかな」
『タコピーの原罪』第8話 作:タイザン5
しずかが非情な人間のようにも思えますが、これまでの話を見てもらうとはじめからしずかの行動理念に変化はありません。
東くんにとってのしずかは「気持ちのいい期待感を与えてくれ、失敗しても受け入れてくれる包容力を持つ人間」であったのに対し、しずかにとっての東くんは「チャッピーと再会するための道具」でしかないわけです。
「私にはもう東くんしかいないの。だからずーーーっと待ってる。東くんが自首して、少年院に入っても、私ずっと待ってるよ」
『タコピーの原罪』第9話 作:タイザン5
もちろんこの言葉は東くんに自首させるための方便でしかありません。繰り返し話すように、しずかはチャッピーのことだけを考え行動しており、東くんの行方など本心では全く気にしていません。
第一、東くんのことを少しでも考えていたのであれば、自首を勧めることなどまずもってしないでしょう。
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