『2.43清陰高校バレー部』第3話 ~これまでの流れを台無しにする回~ 【感想・レビュー】

アニメ

【あらすじ】

 清陰高校に入学したユニチカ。バレー部に入部するユニに対し、チカは県中以降バレーをやめていた。

 そんなチカのもとにはバレー部主将の小田と副主将の青木が勧誘にやってくるがチカはその誘いを断る。

 清陰高校では球技大会が近づいていた。小田チカはバレー競技で同じチームとなり練習を行う。そこでチカ清陰高校のバレー部が春高の本選と同じネットの高さ2.43Mで練習していることをしり、その意識の高さに魅かれる。しかし体育館に入ってきたユニを見ると、入部しないと言い残し立ち去る。

 球技大会本番、ユニのチームとチカのチームバレーの決勝でぶつかることとなった。球技大会のプレッシャーに勝てない不甲斐ないユニをみて掴みかかるチカ。しかしそれはチカをバレー部に入部させるための青木の作戦であった。

「なぁ、もういいやろ。戻ってこい。お前とバレーがしたいんや」

「俺を信じてほしい。お前の全力を貸してくれ」

 ユニ小田の勧誘でチカはどう動くのか。

【レビュー】 

タイトルにもある通り、この回は1・2話と続いてきたこれまでの話を台無しにする回だと言えます。それぐらいこの3話はひどい回だと思いました。それではいかにして台無しになったのか、内容を振り返っていきたいと思います。

 と、その前に前回のレビューを読んでいない方はまずこちらを見てからお願いします。

『2.43清陰高校バレー部』第2話 【感想・レビュー】

こちらではいい話を予感させていました。ただここまでになるとは……。ではご覧ください。

 1.1 小田と青木について

 清陰高校に入学したユニチカユニはバレーを続けているみたいでしたが、チカは県中以降バレーはやめており、高校でも続ける気がなかったようです。まぁ中学時代に信頼していたユニに裏切られ、高校のバレー部も強いわけではないみたいですから。バレーを続けていなくても理にはかなっているのかなと思います。

 そこにバレー部主将の小田と副主将の青木が勧誘に来るわけなんですが。チカ小田に対して「なんでそのポジションにこだわるのか」ときいた途端にブチ切れる青木。ここ怖すぎるなって思ってしまいましたね。もちろん小田がポジションにこだわる理由はあるのかもしれません。しかし、いきなり怒るのはなぁと思いましたね。

 おそらく青木が抱く小田への恋愛感情につながるわけなのですが、あまりに急すぎてびっくりしてしまいましたね。しかも、チカを蹴り飛ばして即終了なので、結局のところ何を伝えたいシーンだったのかぼんやりとしたまま終わってしまったのが残念でしたね。結局この回では小田がバレーが好きということはわかりましたがポジションにこだわる理由が明言されていないわけです。これでは小田がポジションにこだわる理由”と”青木が怒った理由”のつながりが不明になってしまうのです。

 そうなると青木がブチ切れた理由は「好きな人をバカにされた気がした」という急に恋愛チックな話になるんですよ。部活アニメとしてはハンドルを切るには急すぎるんですよね。しかもそれがBLとなるとなおさら。個人的にはグチャグチャになりつつもキラキラ輝こうとするスポーツアニメをイメージしていたのですが、急にBL要素をぶっこまれ面食らってしまいましたね。思っていたのと違うかも……?、これは腐女子向け?と疑念を抱いたまま視聴することになりました。

1.2 織田と柔道部

 そのあとに挟み込まれた小田と柔道部の勧誘も明らかに蛇足でしたね。チカに身長のことを指摘されたということから、織田には身体能力があるという描写が欲しかったのだろうと思いましたが、これはやりすぎです。小田はすでに三年生。時期としては球技大会直前かつ、このシーンの後に高総体が終わった描写があったのでおそらく6~7月でしょう。(もしくはそれより前の4~5月だったという可能性もあるとしましょう)

 それでもそんな時期に「別の部活はいらないか?」と勧誘するでしょうか。不自然が際立っていますね。身体能力があるというのはもっと別のシーン、それこそバレーで示すべきだったと思います。

1.3 ネットの高さについて

 さてタイトルにある「2.43」という数字。この回で「春高本選のネットの高さ」だと明らかになります。おおっ、このタイトル回収は秀逸だなと素直に感心しました。しかしながら、少々疑問が。チカが話していた清陰高校の戦績は芳しくない、むしろ低いレベルのものでした。それなのに全国を目指すのはいささか理想が高すぎやしないのかという点です。

 こういう話を持ち出すのは良くないかもですがハイキュー!!の場合は、昔強豪と呼ばれていたバレー部を描いた話です。ハイキュー!に限らず、スポーツ漫画では全国を目指す話のなかでは強豪校に入学するか、天才のもとに仲間が集まるかの2つのパターンが王道です。しかしながら、清陰高校が強豪ではなく、天才がいるという情報もありません。もちろん凡人が全国を目指すというのは大変夢がある話です。それでも現状ロクな成績を残せていない、1年ありきの(ユニがレギュラーに選ばれたことからもわかる)弱小バレー部が全国レベルを目指すというのは、強引すぎる気がします。話を聞く限り全国はいけない気がするぞと思いますね。せめて大会でもう少しいい成績残していてもいいんじゃないですかねぇ……。こんな成績ではチカ一人が入ることで急激にそこまで力をつけるとは思えないんですよ。現実味があまり感じられないし、チカがバレー部に入ろうとする根拠としてはちょっと弱すぎる気がしますね。

1.4 ユニとチカのぶつかり合い

 この回の中で一番気に食わなかった、これまでの話を台無しにしたシーンというのが、球技大会中におこなわれたユニチカのぶつかり合いです。まず球技大会が行われる体育館のど真ん中で喧嘩を始めた二人でしたが、このシーンの共感性羞恥がすごかったですね。ザ・演出という感じがひどすぎました。流れを汲み取っていなかったり、素人感があると共感性羞恥が起こりやすいのですかね。

 まぁそれは主観が入りすぎているのでさておき。この一連の流れがすべてを台無しにしていますね。まず球技大会でもスパイクが決まらないユニ。その原因は県中の2回戦にあると話す小田。そして俺のせいなのか、という自問自答に入るチカ。少し不穏な流れではありますが、ここまではまだいいです。そのあとユニチカが揉めはじめます。どうやらユニのスパイクが決まらなかった原因は、チームが負ければチカがバレーをはじめると青木に言われたことも関係あるようです。そのことからユニが自分とバレーをしたいことを知るチカ

 「なぁ、もういいやろ。戻ってこい。お前とバレーがしたいんや」

 そう話すと、青木が二人を退場させ、良い感じになります。

 は???????

 ここのシーンが解釈違いすぎて本当に堪えきれませんでした。これまでも微妙な描写がいくつかありましたが、見逃せる範囲でした。しかし!ここは!本当に許せない!このシーンが1・2話と続けてきたフリを台無しにしているのです。

 まずここまでの話を整理しましょう。チカはバレー部の同級生を自殺未遂までに追い込んだという過去があります。しかしユニは、ネットのやつらのいうことより、実際にいるチカを見て評価すると語りました。

 話は飛んで県中の2回戦。ユニが緊張のあまり本来のプレーをすることができませんでした。ユニ以外にまともなスパイク打てる人間がおらず、このままでは勝てないと判断したチカはワンマンプレーに走ることでチームを勝たせます。それに対しなぜか不満を抱いたユニは、大会一日目の夜に友人とチカの悪口を言い合います。また自分がいなくても勝てると勘違いしたユニは2日目の集合時間に現れませんでした。その結果、チームは敗退してしまいます。ユニが連絡もなく現れなかったということをはユニが抱くチカへの評価」もその程度だったということを示します。

 つまり、チームを一度勝たせるためにワンマンプレーをするしかなかったチカ。それに対し子供っぽい理由で怒り、不満を抱いたユニは不貞腐れて大会をサボったチカはそれにショックを受け、ユニはそこでようやく自分の過ちに気付く。2話まではこういった話の流れでした。

 それがどうでしょうか?このいざこざの原因であるユニ

 「なぁ、もういいやろ。戻ってこい」

 こう語るのです。これでは話の筋が通りません。

 これまでの話ではチカに共感できる人が多いかと思います。ユニの調子が戻らない以上、勝つための手段は限られている。チームプレイをしたいが、負けてしまっては元も子もない。その葛藤の末に生まれたのが、あのワンマンプレーです。そのため、チカがした選択というのは間違いではないと思ってます。

 だからこそ、反省すべきはユニの方かなと思っていました。自分の不調をチカに押し付け、チカの悪口を言い合い、挙句の果てに大会までサボるという許しがたい行為をしているのです。ユニ自身も2話の最後に反省している様子でした。

 それがこの3話になると同級生の長門が「チカが悪い」みたいな言い方をします。小田も「原因は県中2回戦」とユニ自身の問題とは思ってないようです。

 当事者のユニすら「戻ってこい」と話しているのですから、「出ていったのはチカに責任がある。俺はいつでも歓迎しているから、早く戻っておいで」と許す立場にあろうとしているのです。

 チカにもコミュニケーション不足はあったかもしれません。しかしどう考えてもユニの未熟さに原因があると思うのです。チカに対しての評価を蔑ろにしてしまった、チカの夢を自分が打ち砕いてしまったことを謝る立場にあると考えます。

 またチカのコミュニケーション不足を指摘するなら、ユニのコミュニケーション不足も指摘する必要がありますチカへ不満がありつつも、県中2回戦後に話そうとしなかったのはチカだけでなくユニにも責任があるはずです。ユニの非が大きい中で、自然と「許す立場」にあろうとするのが私は許せない

 そして、このユニチカの一連の事件がこれで解決になってしまうのが恐ろしいです。「ユニが自らの未熟さを反省し大人になる」という伏線の張り方をしていたのに、「チカのコミュニケーション不足」に話がすり替わってしまっているのです。このままだと、チカがコミュニケーションの大切さを学ぶという一方的な歩み寄りになり、ユニがこの一連の事件を通して得るものはなくなってしまいます

 2話終盤で反省したように、不貞腐れて試合をサボったことを素直に謝り、チカとバレーがしたかったという思いをストレートに打ち明けるのがベストな展開ではないのでしょうか。それを「チカが勝手にバレーをやめた」という評価を下してしまえば、県中後の未熟さを引き継いだだけで、ユニの人間的成長を全く感じられません

【まとめ】

 2話の話を180℃ひっくり返す内容すぎてショックを隠せません。

 期待していた内容では全くなかったですね。これからどのような展開が待っているのか不安で仕方ありません。とにかくこの第3話でこの作品の評価はかなり下がってしまいましたね。本当に残念です。。。

 ここまで読んでいただきありがとうございました。

コメント

  1. […] 『2.43清陰高校バレー部』第3話 ~これまでの流れを台無しにする回~ 【感… […]

タイトルとURLをコピーしました