あらすじ
治安の良さで8年連続世界1位となった日本。
その裏にはDAという国家組織という存在があった。
DAで働く殺し屋・リコリスの暗躍によって、犯罪自体を抹消することで治安が維持されていた。
とある事件で上官命令を無視し、同僚を見の危険にさらしたことから転属を言い渡されたスゴ腕射撃スキルを持つ井上たきな。
転属先は喫茶リコリコ。そこで待っていたのは日本一のリコリス・千束だった。
彼女に翻弄されながらもたきなはDAへと戻るため奔走する。
感想・レビュー
世界観の定義
リコリコであるが、まず第1話から世界観の定義づけが丁寧にされている点に注目したい。
まず注目してもらいたい部分は第1話の序盤である。
可愛らしい少女の声でナレーター(後にわかるが千束の声)が始まる。
明け方の気持ちよさそうな空、朝にふさわしい爽やかで軽快な音楽に合わせて制服を着た女子高生が登場する。
ここで日本の治安が8年連続世界一位であると描かれる。
爆弾を仕掛け、通り魔を起こそうとする犯罪者が現れるも、制服を着た少女が銃で撃ちそれを阻止する。
そしてナレーターがこう述べる。
“首都東京には危険などない。社会を乱すものの存在を許してはならない。存在していたことも許さない。消して消して消して綺麗にする。危険はもともとなかった。平和は私たち日本人の気質によって成り立っているんだ。そう思えることが一番の幸せ。それを作るのが私たちリコリスの役目”
『リコリス・リコイル』第1話
ここで“リコリスと呼ばれるエージェントの暗躍により、日本の治安が世界一に保たれている世界”というのが最も序盤で説明される。
おそらく『リコリス・リコイル』という物語の核となる文言である。
これを第1話の最序盤で説明することで、視聴者側もある程度理解が進んだうえで観ることができるし、今後の展開や設定がイメージでき世界観に入り込みやすいのだ。
そして次のシーンでは
「神話を国民に信じさせるのが我々DAの責務ですよ」
『リコリス・リコイル』第1話
このセリフに加え、少女に対し「リコリス」という呼び名を使うことからリコリスを取り仕切る組織がDAであることがわかる。
以上のように、設定に対して丹念に描かれているという点は非常に良い。
世界観と登場人物の価値観
物語のプロローグ部分で『リコリス・リコイル』における世界観の根幹を示してはいるものの、あくまでも世界観の土台にしか過ぎない。
いくつも疑問が残る部分があるし、ぼんやりとしかわからないことも多い。
視聴者の中でぼやけている「『リコリス・リコイル』の世界観」を固めるのが、登場人物たちの会話である。
この第1話の時点で設定の補完をしようとする試みは素晴らしいと思う。
やはりある程度の設定は掴んでいないと、物語の中に入り込むことができないし、登場人物の心象や背景に共感することができなくなるからだ。
特に気になる部分はやはり「リコリス」という単語であるが、これについてはミヅキとたきなによって補足がされている。
まずはミヅキのセリフから。
たきながDAから転属を言い渡され、初めて喫茶・リコリコを訪れる。
そこでミカはたきなに、元情報のDAとしてミヅキを紹介する。
その際、ミヅキは次のように言い放つ。
「嫌気がさしたのよ。孤児を集めてあんたらリコリスみたいな殺し屋をつくっているキモい組織に」
『リコリス・リコイル』第1話
日本の秩序を保つための組織という性質を持つ反面、孤児を利用しているというマイナスな面・不穏さがちらりと見える。
そしてそれを理由に退職する職員がいるのだから、DAという組織と日本の治安維持が良いことばかりではないことがわかる。
次に気になるのはたきなのセリフだ。
転属後、初めての外出にて千束が保育園・日本語学校・組事務所を訪れるなどする姿に疑問を抱く。
たきなのセリフからリコリスは国を守る公的機密組織のエージェントだと判明する。
そのことからDAというは正式な組織かつ大きな団体であることがわかる。
注目すべき点は自然な流れで舞台の説明がされているという点だ。
ミヅキの説明でも「DAに対する愚痴」という体裁をとりつつも、リコリスの制度について説明がされている。
たきなも同様に「千束に対してリコリスの在り方を疑問視する」という建前のもと、リコリスとは何かについて触れている。
「視聴者に向けた説明」をしているのではなく、あくまで「登場人物から自然に出たセリフ」によって説明がされている。
もちろんわざとらしい説明を避け、自然なセリフになるような脚本にしているのは間違いないだろう。
ただ自然な流れ・セリフで世界観の説明がされることで、登場人物が視聴者側に寄ってくる感じがしない。
むしろ『リコリス・リコイル』という世界観がどういうものかについて視聴者が興味をもちやすく、没入しやすくなるのだ。
千束とたきなの価値観
第1話でわかったことは千束とたきなの価値観に大きな隔たりがあることだ。
たきなは人の命を軽視している節がある。
序盤にて同僚が人質に取られているにも関わらずマシンガンをぶっ放す、仲良くなった一般人のお姉さんが身の危険にさらされていてもかまわず戦闘をする、と人の命などお構いなしだ。
一方の千束は敵であろうと、命を大事にしている。
たきながいきなり弾をぶっ放す一方、まず千束は話し合いを求め、また殺さないように徹底している。
この距離感が今後どう変わっていくのかが見どころである。
今後の展開
もちろん第1話にして不鮮明な部分が多く、どのように明かされているのかが楽しみな点である。
・たきながどうしてもDA人戻りたい理由
・千束が日本一のリコリスと呼ばれる理由と、DAの所属ではない理由
・リコリスの実態(なぜ女子高生を彷彿させる制服なのか)
・延空木とは何か
・旧電波塔での事件は何があったのか
・アランアダムスという謎の組織
と、第1話にして続きが気になるような伏線がちりばめられていてワクワク感がとても楽しいのである。
まとめ
世界観がしっかりまとめられているかつ、次が気になる伏線がちりばめられている完成度が高い第1話であると思う。
また記事を書くつもりなので、その際はぜひとも。
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