【あらすじ】
マーチにより”それ”は「フシ」と名付けられた。フシとマーチは森をさまよっているうちにハヤセに見つかってしまう。そこで捕らえられたマーチは生贄にされるため祭壇へと連れていかれるのであった。。
一方でハヤセ達に捉えられていたパロナは、ハヤセの部下たちに監視されていた。パロナは仕込み刀を使うことで手縄を切り、脱走を試みる。そこに小さな山ぐらいはあるだろう巨大な熊が襲い掛かる。パロナは命からがら逃げた先でフシと出会う。
ハヤセはというと、マーチを薬で眠らせたのち祭壇に括り付け、生贄にする準備を進めていた。そこに先ほどの巨大熊:オニグマ様があらわれ、マーチを喰らいつくそうとする。そのときパロナが助けにやってくるが、祭壇に縛り付けられたマーチの縄を切ることはなかなかできない。
そんな場面にどこからともなくあらわれたフシ。オオカミに姿を変えるとオニグマに喰らいつく。反撃を受けながらも驚異的な再生スピードと向上する身体能力が相まって、オニグマを仕留める。
オニグマとフシに興味を持ったハヤセは、マーチとパロナの命を保証することを条件に、マーチとパロナ、フシ、オニグマを国に連れて帰ろうとするのだった。
【レビュー】
まず前回のレビューを見ていない方はまずはそちらから。
では今回のレビューをどうぞ。
1 伝統に抗おうとするパロナ
3話の中盤からマーチが大人になることを諦める描写があります。
「マーチは大人にならない」「立派な選択です、マーチ」
マーチは自分が生贄になることを受け入れ、それこそが「大人な選択」であると自分自身に言い聞かせようとしているようでした。
しかしそこに現れるのがパロナです。
「しきたりなんて守る必要ない。自分で大人になることを選んでいいんだ」
こう話すことで、マーチを”生贄を受け入れることが「大人」”という、伝統が引き起こした悪しき風習から解き放とうとするわけです。マーチは「大人」という呪縛に捕らわれかけていたのを、「大人」であるパロナが救うというのはなかなかエモいシーンでしたね
2 小さな変化をみせるフシ
さて第3話で注目すべきはフシの行動ですね。
前回の第2話からその兆候はありました。マーチが渡した果物にかぶりつく、マーチの後をついていくなど、第1話では少年の指示に従うだけ・ついていくだけだったフシが自律的な行動の片鱗をみせました。
しかしこの回ではさらに変化をみせます。マーチを助けに祭壇まで向かうのです。さて第2話序盤を思い出してほしいのですが、ここでは一度オニグマと遭遇しているんですよね。いきなり襲われたということもありますが、このときフシは「闘う」や「逃げる」という選択はとらなかったんですよ。生き返るフシにとって「死ぬ」という行為は問題ではないため、労力を費やして戦うメリットというのはあまりないのです。まさに戦う意味はないという状況です。それがこの時はどうでしょうか。「マーチを探し」、「オニグマと戦う」という選択を自らがするのです。
このマーチを探し、守ろうとする行為は実に動物的ですよね。自分の家族を守ろうとする愛、という感じがします。そうした面からも感情らしきものが芽生えていっているのかなと思いますね。無機質にしか動くことのなかったフシに変化が感じられます。
そしてこの回の最後。マーチとパロナが無事を喜んでいるところにオオカミとなったフシがやってきます。恐怖を感じたパロナが誤って果物を地面に落とすと、フシはそれに喰らいつき、最後に「ありがとう」と述べます。ついにフシが言葉を話すわけですよ。この「ありがとう」は第2話でマーチがフシに教えた言葉になります。だんだんと人間・動物らしい行動をとっていくフシ。今後どのような変化が訪れるのかが楽しみになっています。
3 これまでで気になる点いくつか
まずマーチとパロナの関係性についてですね。ハヤセがマーチたちの住むニナンナ村に来た際にマーチを逃がそうとしていましたし、祭壇に連れていくときも単身助けに行きました。そして今回はオニグマに襲われかけているところを命がけで助けに行きました。このようにパロナはマーチを救おうと行動しているわけですが、こうした行為は村の伝統への反逆を意味します。マーチの両親もマーチが生贄になることを泣く泣く了解しているわけですから、もともと村の伝統は簡単に覆せるものではなさそうであり、かなり強固なものであることが伺えます。そこで疑問なのが、”どうしてパロナがそこまでしてマーチを救いたいか”という理由です。第2話でマーチとパロナの仲が良いんだなということは何となく伝わりましたが、それでは正直薄いですね。伝統を捨て、命を懸けているわけですから、より深いエピソードが欲しいですね。それが今後明らかになればパロマのことをもっと好きになれるでしょうし、この話の経緯にも納得できるかと思うので楽しみに待ちたいとこです。
次に気になるのは今後の展開ですかね。今の問題点としてテーマが見えてこないということが挙げられます。命の大切さを伝えたいのか、仲間の意義を伝えたいのか、生贄という制度があるこの世の中を変えたいという思いがあるのか。そもそもアドベンチャー系なのか、ファンタジー系か、はたまたヒューマンドラマなのか。そのあたりがいまだに見えてきません。話の終着点がまったくわからないのです。
もちろん、メリットもあると思います。フシがどのように成長していくのかが読めないことの面白さ、世界観が明らかになっていくワクワク感などです。
しかしデメリットも当然あります。例えば、大人気マンガ『鬼滅の刃』は第1話から「妹の禰津子を助ける」ことを目標に、「鬼を倒す」という手段を取っています。序盤ですでに目的と手段を明示することで、視聴者は「妹はどうすれば助かるのか」に注目するだけではなく、「鬼殺隊と鬼」というわかりやすい関係性を示し、さらには「どうやって強くなっていくのか」という過程をわかったうえで見ることができます。今後の展開をある程度知らせることで、見ている人と展開のすり合わせを行い、ここから鬼を倒して禰津子を助けるまでどうなっていくんだという楽しみにつながるわけです。
ただ、この『不滅のあなたへ』ではそうした目的と手段が明らかではないのです。もちろん「マーチが大人になろうとする葛藤」や「パロナがマーチを助けたいという想い」など要所要所では見られていますが、それはあくまで「点」としての面白さです。最初に目的を提示し、最後にどうなるのかといった「線」の面白さが欠けているという印象です。もちろん「線」が読めないというところも面白さなのかもしれません。しかしこのままいくとまとまりがない話になってしまう予感がするので、目的を明らかにしてもらった方がいいのかなと思います。
そして展開の遅さも少し気になります。ジワジワとくる面白さ、という部分はわかるのですが、なんせパッとした変化がない、すなわち華が感じられないんですよね。それゆえこのあたりで視聴を切るという人が多いかもしれません。それがちょっともったいないのかなと思います。展開の遅さが良さにつながるのかもしれませんが、視聴者が離れてしまっては元も子もありません。こうしたところがもったいないのかなと感じましたね。
【まとめ】
フシが人間的・動物的な変化をみせた回でした。ハヤセの国に行くことでどう変わるのか、続きが楽しみになるところです。ただやはり目的の不明瞭さや展開の遅さは否めないので、切られてしまう可能性が高いような気がして心配です。加え、ここまでじっくり進めたということはラストの結末が重要になってくるわけですから、そのあたりまで含めてみていきたいですね。
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