今回も続きに続いて『一ノ瀬家の大罪』という作品を見ていこうと思う。
前回の記事は↓からどうぞ。
考察
年上の男性とのデートを目撃した翼と勇希。
そしてついに明らかになった詩織の部屋。一面ぬいぐるみだらけの部屋を見た翼であったが……。
翼の本心
誤って詩織の部屋に入ってしまったことで大ゲンカへと発展する2人。
そこで断片的な記憶が蘇り、詩織に対しての感情が高まる。
“なんだか無性にイライラする
なんか、そうだよだって、俺はお前の”
『一ノ瀬家の大罪』第8話「翼の疾走」 作:タイザン5
このように翼は泣きわめく詩織がどうも気に障る様子であった。
成人男性と一緒に行動していることを罵り、自分を頼るように誘導する。
「お前もよくキモくないよな。チヤホヤされて嬉しいんだろうけど。
あんなオッサンにぶりっ子してくっついて、傍から見るとバカみたいだぜ?
お前は子供だからわかんないんだろうけど、
全部俺に相談して大人しく俺を頼ればいいんだよ。
そしたらーー」
『一ノ瀬家の大罪』第8話「翼の疾走」 作:タイザン5
「パパ活を止めたい理想的な兄」をイメージして翼は語りかけているのだろう。
しかし、実際にはドロドロとした独占欲と抑えきれない嫉妬を煮詰めたかのような言い方をしている。
詩織の傍に居る人物は自分しかいないだろ・それ以外の選択肢は許さない、と言わんばかり自分を求めてアピールをしている。
かなりきつい言葉で詩織を罵倒し、自分を頼りにして欲しい・相談してほしいという翼の思いは「妹への愛」という言葉で片づけるには少々重すぎる。
加え「無性にイライラする」という言葉も、詩織を慮ったものとは言い難い。
どちらかと言えば翼の嗜虐心を満たすための存在のようにみえてしまう。
実際、翼の記憶の欠片には泣いている詩織の姿がある。
もしかしたら家庭内では詩織に暴力を振るっていたという可能性が考えられる。
そんなわけでケンカとなってしまった2人。翼は部屋を追い出され、一人立ちすくんでしまう。
そこに帰宅中の父・翔と話すこととなる。
この一連の喧嘩について翔に相談するが、「本当に詩織ちゃんのこと、大切なんだね」と評される。
ただこの「心配」という言葉の意味をはき違えていそうなところが怖い点でもある。
「心配」という意味は相手を慮ることではあるが、一方的なものであってはならない。
「心配しているだけ」「あなたを想って」と見せかけの正当性を身に付け、「愛」を謳いながらも実際には日常的に暴力をふるうというパターンはDV界のなかでは王道だ。
特に翼の言動を「心配していたから」と要約されてしまうと、「心配」を理由にしつつより悲惨な暴力や罵倒をする翼も容易に想像できてしまう。
また『一ノ瀬家の大罪』は「七つの大罪」をモチーフにしていることが考えられるが、翼は「嫉妬」「憤怒」の罪の可能性が出てきた。
いずれにせよ、翼と詩織の間には深い関係値があることは間違いないが、翼が見せた感情の高ぶりがどういう理由であったかは今後も見ていきたい。
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