呪術廻戦と安倍晴明について
『呪術廻戦』という作品は史実をベースに構成されている。
このことは以前書いた下記の記事でも少し触れている。
作中の表現より虎杖悠仁の祖先のモデルが播磨国と関係が深い蘆屋道満ではないかと考えていたが、最新話の動向を見る限りその線が薄くなってしまった。
しかしながら今回着目したい部分は『呪術廻戦』と安倍晴明の関係性についてである。
『呪術廻戦』という作品において、非常に奇妙な点は安倍晴明に関連する事柄が一切といっていいほど登場しないことである。
平安時代・呪術というワードを並べた時に真っ先に上がる人物は間違いなく安倍晴明であるはずだ。
ただ現在まで安倍晴明はおろか、安部家という名前すら登場がない。
ここで『呪術廻戦』がファンタジーをベースに、作者が世界観を構築しているならわかる。
しかしそうではなく、『呪術廻戦』はあくまで史実をベースにしているからこそ、より謎が深い。
まずわかりやすい例が乙骨憂太である。
菅原道真という偉人を祖先に持つ彼は才能に恵まれており、特級という看板を手にする。
おそらく作中に登場する人名と史実がマッチする例は菅原道真だけであるが、それ以外にも史実をベースとする証拠はある。
乙骨関連でいえば”死滅回游”編での仙台結界にて、烏鷺から「藤原」の名前で呼ばれている。
菅原道真とは関係ないようにみえるが、「藤原」といえば平安時代に絶大な権力を握った藤原道長に代表されるように一族で猛威を振るっていた「藤原家」のことであることは間違いない。
次に御三家についてみていこう。
五条家については詳細は明らかになっておらず、菅原道真系列ということしかわかっていない。
したがって作中オリジナリティ色が強いのではないかと思われる。
次にみるのは禪院家であるが、禪院家には「禪院家に非ずんば呪術師に非ず、呪術師に非ずんば人に非ず」という格言がある。
これは「平家にあらずんば人にあらず」という『平家物語』の平時忠の言葉をオマージュしていることは間違いないだろう。
最後に一番重要な加茂家である。京都校の加茂憲紀や、最悪の呪術師・加茂憲倫を輩出している加茂家。
しかし史実から考えると加茂家=賀茂家であり、この賀茂家というのは安倍晴明に代表される安部家と並ぶ二大陰陽師の家系である。
賀茂忠行・賀茂保憲などが著名であり平安時代の陰陽師を語る上では欠かすことができない一族だ。
そして平安時代の著名な陰陽師の1人として数えらえるのが蘆屋道満である。
蘆屋道満は安倍晴明のライバルとして有名であり、しばしば勝負を行っている様子が描かれている。
余談ではあるが『呪術廻戦』作者の芥見先生が好む奈須きのこ先生の作品Fateシリーズでもこの蘆屋道満が登場するが作中でもトップクラスの愛されキャラ()である。
さてこの蘆屋道満についてであるが同姓同名までは出てないものの、蘆屋道満をモデルにしたであろう人物が登場している。
それは第10巻にて登場しており、与幸吉がシン・陰流「簡易領域」を使用した際に説明として登場している。
「それは平安時代、蘆屋貞綱によって考案された。
呪術全盛の時代、凶悪巧者な呪詛師や呪霊から門弟を守るために編み出された技。
一門相伝。その技術を故意に門外に伝えることは縛りで禁じられている。
それは”領域”から身を守るための弱者の”領域”」
『呪術廻戦』10巻 第82話「宵祭り-参-」
この蘆屋という珍しい名字の時点で、蘆屋道満を意識していることはほぼ間違いない。
つまりこの蘆屋貞綱のモデルは蘆屋道満であると考えられる。
以上のように『呪術廻戦』は史実との関連性が深いといえる。
コメント