『タコピーの原罪』はなぜ人気なのか?/しずか編【考察・レビュー・解説】【PART2】

マンガ

人を動かす力

 続く第6話。ここではチャッピーを探す計画について話し合う最中に東くんの兄・潤也が登場。

 勉強もでき、期待もされている兄に対して東くんは嫉妬と劣等感を露にします。

 しずかはそんな東くんに対して、潤也がアルバイトをして購入した大切な指輪を盗むよう提案します。

  

「なんていうか、東くんならできそう」

『タコピーの原罪』第6話 作:タイザン5

 この言葉を胸に、東くんは潤也の指輪を盗む決心をします。

 このシーンではしずかの「男を動かす力」をより強調したものとなり、登場してはいないもののしずかの母親を想起させるようなセリフとなっています。

 結局のところ東くんは指輪を盗むことに失敗します。

 優秀すぎる兄を持つが故、これまでの人生において「(親から)認められる」という経験をほとんどしてこなかった東くん。彼にとっては「失敗」という単語は何よりも重い単語であり、そのプレッシャーと戦い続けていました。

 そのため「できそう」と期待を背負わされた東くんは、その期待に応えられなかった不安と見放される恐怖を感じます

「なにふたりとも、ぼろぼろじゃん」

『タコピーの原罪』第6話 作:タイザン5

 そう、しずかは優しい言葉をかけ微笑み、期待に応えられなかった東くんを受け入れたのです。

 東くんにとってのしずかという存在が、「家庭ですら満たしてくれない劣等感を満たしてくれる甘美な存在」へと、確実に昇華した瞬間です。

 ただ第6話の一連の流れですが、しずかが意識的に東くんを唆し、オトしたわけではないように思います。しずかの取った行動がたまたま東くんの精神状態や家庭環境にぶっ刺さってしまったというだけのように思います。

 そうした過程はどうであれ、結果的に「オトす才能」をいうものを感じざるを得ない構成になっているというのは脱帽です。

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