自分を認めてくれる存在
しかし東くんの状態はというと、母親の期待を裏切ってしまったため、せめてしずかの期待には応えなきゃいけないという使命感に駆られています。
それでも、自分が利用されるのではないか、また諦められるのではないかという恐怖と不安に怯えていました。
それを払拭するように、しずかは東くんの頬にキスをするのでした。
「大丈夫。大丈夫。大丈夫。大丈夫だよ」
『タコピーの原罪』第9話 作:タイザン5
この時点で、東くんが安心して体を預けられる人物が母親からしずかへと移り変わったのでした。
ここで着目してほしいのは、しずかが完全に東くんを手中に収めているという点です。
まず東くんの心に寄り添い、彼に期待することで逃げ場を無くしています。また「東くんしかいない」と限定することで、特別感を演出しています。極めつけは頬にキスをしたということ。
ここまでのやり口が奇しくも「色恋」一致します。これはつまり「目的のために女である強みを生かす」という母親の姿と重なるのです。
もちろん、しずか自身は母親の仕事ぶりを間近で見ているわけではないでしょう。
それでも同じような行動をとってしまう「親の影響」を、非常にも演出しています。
ただ東くんのことを本当に好きで、ゆがんだ愛情の結果が第8話ではないのか、という疑念を抱く方もいるでしょう。
それは第10話で否定されることとなります。
しずかに自首を頼まれた東くんは直前で兄・潤也の説得により止められます。
自首という選択肢が無くなってしまったしずかとタコピー。
「何言ってんの。今日から夏休みだよ。だから行こう!東京!」
『タコピーの原罪』第10話 作:タイザン5
東くんの協力がないことに対しては何一つ感想を言わず、ただ東京に行く=チャッピーを探しに向かおうとするわけです。
仮にしずかが一人の人間として東くんに接していたのならば、ショックを受けていたり、怒ったりしたと思います。
ただ、しずかは東くんを道具だと考えていたからこそ何も感情が沸かず、すでに東京に行く計画はできていたため「用済み」となってしまったのです。
以上、「大人の影響を受ける子ども・しずか編」として長々語ってまいりました。
しずかは子供らしからぬ行動が目立つ人物でしたが、恐ろしいほど母親色に染まってしまっているのだなと思います。そうした皮肉なまでの解像度の高さが、面白いポイントなのでしょう。
それでは、次回の記事でお会いしましょう。
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