「不自由さ」がなぜ面白いのか
不自由さの中の自由さ
同じトリガーで戦うということは逆説的にトリガーの性能が敗因にはならないということだ。
トリガー以外の部分、身体能力やトリオン性能、戦術・戦略、アイデアで差がつく。
特に戦略や戦術を重要視している部分が非常に面白い。
例えばオサムと風間の模擬戦がそうだ。
この模擬戦が行われるのは第5巻だが、それまでの話では空閑や迅、A級隊員のバトルがメインとなっている。
特にA級である三輪隊による空閑への奇襲、空閑の所在を巡った迅・嵐山隊 vs A級トップ3の太刀川隊・風間隊・冬島隊による黒トリガーの争奪戦と実力者同士の派手な戦闘が見ものであった。
一方、経験や技術に乏しいオサムは裏方に回ることが多く、活躍の場面が限られていた。
この風間とのバトルはオサムにとっての転換期となるわけだが、『ワールドトリガー』においても転換期である。
これまでは「黒トリガーの強さ」に注目されていたわけだが、ここでようやく「三雲修」に焦点があてられる。
2人の模擬戦ではオサムが為すすべもなく一方的にやられてしまい、20戦以上行うもののかすり傷すら与えられず試合は終了へと向かう。
しかし空閑のボーダーに入隊させる代わりに迅が師匠の形見を手放したという事実を聞き再戦を依頼する。
オサムは一矢報いるための発想を生み出す。
結果、風間がオサムと張り合うためダメージを負ったというのもあるが十分な大金星をあげる。
ここでのオサムは戦闘経験も技量も全く満たないものである。
しかし、「通常弾の散弾で部屋を埋め尽くす」「スラスターでの突撃」「シールドでの行動制限」「ゼロ距離射撃」と創意工夫に富んでいる。
このことについては風間も次のように評価している。
「自分の弱さをよく自覚していて、それゆえ発想と相手を読む頭がある。
知恵と工夫を使う戦い方は、俺は嫌いじゃない」
『ワールドトリガー』第5巻 第37話「三雲修⑥」
このように戦略・戦術という目線からバトルを楽しむことができるというのが『ワールドトリガー』という作品の特徴であるといえる。
その契機となるのがオサム vs 風間のこの模擬戦であった。
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