④ 瀬尾の勧誘
第7話からは瀬尾勧誘編となるが、ここで瀬尾の兄がゲームプランナーであったこと。
仕事がうまくできないままに亡くなったことが明かされる。
兄を慕っていた瀬尾はそのことが心残りであり、それからゲームという選択肢が消え去っていったことが明らかになる。
來暇はなんとか瀬尾を勧誘するため、彼の自尊心とゲーム好きな思いを燻るように仕向ける。
しかしながら、この瀬尾勧誘編の9話時点で掲載順は一番後ろになってしまっている。
つまり大きな原因としては前回までのゲームジャム編で読者を掴み切れていなかったことが大きいように思える。
再度、話を繰り返すこととなるがやはりゲームジャム編では”派手さ”という部分がいかんせん欠けていた。
ライバル登場!、というような目を引くことでもなく、劇的な勝利というわけでもなく、健康的な高校生という括りで終わってしまったのがつらい。
繰り返すようだが、個人的には話の構成なども好きで今後の展開も見たいと思える話であったが、それではプラス10話かそれ以上の話数を要してしまう。
週刊誌という特性上は、よりスピーディーな派手さが欲しいところであったのかなと思う。
⑤ 主人公たちが掲げる目標
気になった部分で話すと、目標に対してのストーリー性がやや薄いという部分だ。
作中では來暇が夢を語るシーンがいくつか見られる。
第2話では、來暇が日隈をゲーム作りに誘い受ける際に次のようなことを話していた。
「今日までの制作協力とさっきまでの話は能登來暇という人材の日隈橙への売り込みだ。
お前が作ったもんをオレが拡げる。今度は世界を沸かすまで
オレとゲームつくんねぇか」
『白卓 HAKUTAKU』第2話「コンティニュー」 作:石川光貴 集英社
そして第6話では來暇がより明確な目標を定めることとなる。
「インディーで世界を沸かすってんなら世界中の人間がオレらのゲームを遊んで
その話がキッカケで友達ができる。
そいつらの幸せの一端になる。
それが出来るチームがあるって知らしめるために
世界最大のゲームアワード、ゲームオブザイヤーを獲る。
オレらはそこがスタートですね」
『白卓 HAKUTAKU』第6話「牛と狼と世界と瀬尾」 作:石川光貴 集英社
夢を語ることで目標がはっきりとしていて非常によい。
『ワンピース』や『NARUTO』同様に夢を語るということは非常に興味深いところだが、はっきりとしている分、「含み」がない部分がすごく気になってしまう。
日隈と來暇の過去については序盤ですでに語られており、いわゆる「伏線」というものが特段ないままストーリーが進んでいる。
いわば手の内を明かした状態で勝負していたわけだが、つまり読書側としては今後どうなるの?というドキドキ感なしで直球の一話勝負になってしまったのである。
これは1-2話で制作していた「学校アクションゲーム」も、3話で制作した「商店街イヌネコ探しゲーム」、ゲームジャムでの”ぎゅーしゃ”、そして瀬尾勧誘編での”ハイドアウトプラン”に関してもいえることである。
本作はあくまでゲーム制作というところに着目しており、勝負の部分にあまり触れられていない。
楽しませるという本来の目的に注力しすぎたがため(それが良さでもあるのだが)、じゃあ次の展開がどうなるのかという高揚感が得られにくい。
予定調和的な動きになってしまったのが残念なポイントである。
総括
個人的には好きな話ではあったが、内容としてはジャンプ本誌向きではなかったのかな……?という感想である。
ジャンププラスや他誌などであればゆったりとした流れで今後の話が見れたのではないかと思うの悔まれる部分も多い。
次回作に期待したいところではあるので今後も楽しみにしたい。
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