“最強”五条悟
『懐玉・玉折』の序盤~中盤ではまだ術式反転を使用できない、現代のような”最強”五条悟ではなかった。
しかし数百年ぶりに生まれた無下限呪術と六眼持ちという素晴らしい才能は如何なく発揮していた。
術師の多くが2級や準1級で生涯を終えるのに対し、高専生時点で特級になっているということがその特異性を表している。
ただ特異であるということは孤独であるということでもある。
しかしそんな彼が人間としての地盤を得ていたのは夏油傑という存在がいたからである、
特級という同じ立場の人間が同い年としていたおかげで五条は自分の力を正しく使おうとすることができていた。
そのため、五条は夏油の判断を善悪の指針にしていた節があるので、夏油の存在はかなり大きかったといえる。
特級相当の実力もさることながら、その仲の良さや17歳という青さによる無敵感も相まって、五条と夏油のコンビであればどんな問題ですら解決できてしまうのではという期待をものすごく感じることができた関係性であった。
そう。二人がこれからも一緒であったのならば、である。
死を実感したことにより反転術式を覚えた五条悟はついに”最強”に成ってしまった。
同じ特級でありながらも全く別の世界の人間になってしまったと夏油自身が感じてしまった。
また”最強”に成ったことで二人で任務をする機会も減ってしまった。孤独を感じる機会が増えてしまったのだ。
その孤独を感じていたのは実際のところ五条よりは夏油のほうであった。
五条の前では自分は小さな存在でしかないと思い、呪術界という生きにくい世界の在り方を考え始めたのであった。
そこへ訪れたのが灰原の死である。
精神的に参った思考に陥っている中でも、健気に話しかけてくれた存在であった。
そんな彼もとある任務で命を落としてしまう。
夏油は自分も含め、世界に対する無力さを散々味わってしまった。
そして仲間の死を防ぐことのできない不条理さを受け入れることが到底できなかったのだ。
自分や仲間の命をむやみに捨てることでしか救えない世界にやるせなさを感じる。
そして決定打となったのが菜々子・美々子が住んでいた村を訪れたときのことだ。
呪霊という原因があるにも関わらず幼い二人が牢に入れられ、監禁されていた。
本来であれば非術師を守るためにある菜々子・美々子のような存在も、知らない非術師によって迫害される。
そんな現実を受容することができなかった夏油は非術師の抹殺を考え、高専を立ち去ることとなったのだ。
まとめ
夏油は遅かれ早かれこのような課題にぶつかっていたに違いない。
ただ一番大きな問題は夏油に寄り添える人間がいなくなってしまったということである。
彼の近くに理解者がいたのであれば違った現在になっていたことだろう。
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