足掻くことのできない運命
しかし、ここまで親の影響の受けていながらも、しずかが母親と同じ道を歩むというのは何とも言えないグロテスクさを感じると同時に、そういう残酷さを打ち出せる点が『タコピーの原罪』の面白さに繋がっているのだろうと思います。
母親と同じ道というのは「目的のために女であるという強みを生かす」という点です。
しずかの母は夜の仕事、すなわち「女」であることで生計を立てているわけです。
それと同様に、しずかは自分の目的を果たすために東くんを利用するわけです。
では、しずかの目的とはいったい何でしょうか?
それは「飼い犬であるチャッピーと一緒に過ごす」ということです。
これは第1話でも
「チャッピーがいれば私は大丈夫。他には何もいらないんだ。何があったって平気なの。どんな痛いことやつらいことだって……」
『タコピーの原罪』 第1話 P21より 作:タイザン5
とはっきり述べており、しずかにとって一番大切なものであることは明らかです。
これについては今後別記事にて詳しく掘り下げる予定です。
ただひとまず、しずかはチャッピーのためだけに動くということを覚えておいてください。
さて本編を振り返っていきましょう。
第4話にて事故によりタコピーがまりなを殺害し、第5話でそれが東くんに見つかってしまいます。
社会にちょっとだけ詳しい東くんは、しずかが警察に捕まり少年院に入ってしまうだろうと告げます。しかし、それではチャッピーに会うことはできないと感じたしずかは、東くんに協力を仰ぎます。
「東くんしかいないの。助けて」
『タコピーの原罪』第5話 作:タイザン5
ここからしずかと東くん、タコピーという3人(2人と1匹?)で協力関係を築きます。
ただここで二人の関係性に齟齬が生まれているのです。
東くんは「頼りにしてくれる彼女の期待に応える」という考えで行動するのに対し、しずかは東くんを「チャッピーと再会するための手段」と考えています。これは「目的のために女である強みを生かす」という母親の姿と重なってしまうのです。
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