世界の背景を描く丁寧さ
先ほども述べたように「外界の人間」であるスレッタがいるため、プロローグと異なり世界観の描写がしっかりされている。
説明が丁寧あるという部分にも注目してもらいたい。
まずスレッタが学校に到着すると、学校の敷地が長尺で映し出されるシーンがある。
アスティカシア高等専門学園がまず俯瞰で映し出される。
広大な敷地と自然に敷かれた鉄道。そしてバイクのようなもので走る学生がいることから相当に広いということが伺える。
モビルスーツが構内を歩いていること、座学を受けている様子や同型のモビルスーツが並ぶことから基礎からしっかり学べる学校であることがわかる。
このような基本的な情報でも視聴者が共有することで、製作側と視聴者側の「世界観のズレ」を無くした状態で視聴できることが大きい。
価値観の指標
現実世界をベースにおいていない世界を描く上で大切なものは何か。
それは価値観である。
その世界の住人が何を指標にしているのかをはっきりさせることが大切である。
『水星の魔女』において大事なものは「実力」と「結果」であることがわかる。
この価値観はベネリット社総帥であるデリングの影響が大きい。
彼はベネリット社のトップとして傘下企業の業績をみていた。
成績トップである御三家は褒める一方、芳しくない成績を続けて残した会社には融資を撤退する。
改善の余地があるにも関わらず、機会を与えた会社であれば容赦なく見捨てる。
彼は情に流されることはなく、ただ結果だけを見て判断するという考えを持つ。
その影響は彼が経営するアスティカシア高等専門学園にも表れている。
アスティカシア高等専門学園では争いごとの解決方法は「決闘」と呼ばれるシステムで解決される。
この決闘というのがモビルスーツ同士での戦いである。
さて、この戦いの前には「口上」という儀式が行われる。
「勝敗はモビルスーツの性能のみで決まらず
操縦者の技のみで決まらず
ただ結果のみが真実」
Ⓒ『水星の魔女』第1話
この口上にも結果主義ということが現れている。
どんな状況であろうが勝ったという結果のみが一番大切なのだ。
圧倒的な資本主義世界であり、弱者は淘汰されるのみである。
そうした価値観があられているのが『水星の魔女』という世界感である。
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