【感想/レビュー】『一ノ瀬家の大罪』「颯太の正体について」【考察】タイザン5

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翼の兄という説

 以上の理由より、颯太が一ノ瀬家という家族に該当する可能性が十分に考えられる。

 その場合、思いつきやすい部分として翼の兄であるという可能性がある。

 しかしこの説は状況証拠的に矛盾が生じてしまう。

 初めの問題となるのは年齢だ。

 まず翔の年齢であるが、 第13話「美奈子の追憶」では「30も年下の子供に言い返せないところ」という美奈子の批判が述べられていた。

 翼が4年間の昏睡状態であることを一度無視し、中学2年生という前提で考えると、翔の年齢は40代前半くらいであると推測できる。

 一方の颯太は少し若く見える。30代くらい、なんなら20代も全然ありえてしまう見た目をしている。

 その年齢差を考えると翔・美奈子の子供であるとは考えにくい。

 2つ目の根拠として美奈子との関係である。

 以前書いた記事でも見られるように、作者のタイザン5氏は名前を大事にしている節がある。

 では美奈子は颯太に対して、どのような呼び方をしていただろうか?

「そんなことより私はあなたの正体も思い出してる。

 止めるんなら翼に全部バラすから」

『一ノ瀬家の大罪』第13話「美奈子の追憶」

 ここで自分の息子という関係性であれば、”あなた”という言葉は使わないようはずだ。

 また”あなた”という少し丁寧な言い方から年齢は近しい関係だが、距離感をとった発言にみえる。

 加えてここで”バラす”という表現を使っているが、息子が自分の父親を名乗るという奇行に走っていたのであれば注意や疑問を話すと思う。

 「なんでこんなことをしているの?」「こんなことやめなさい」と、強い言葉がみえるはずだ。

 しかし注意喚起で留めているのは、一方的に止めることができる関係性ではない=少し距離間のある関係値であると考えられる

 つまり”あなた”という言葉や、そのバラすという発言からも年齢関係でいったら近しいが、家族関係では少し遠い立ち位置のように思える。

 最後に家族写真に写っていないという矛盾は解決しにくい。

 颯太が翼と中島の写真を撮り、南小FCの応援に訪れるくらいのなかであればそこまで不仲ではなかったはずだ。

 さらに家族差写真の表情や翼があえて顔にバツ印をつけていることからも一番幸せだった時期であることは間違いなさそうである。

 そんな関係性であるにもかかわらず、家族の思いで写真に参加していないのはどうも違和感がある。

 以上のことから翼の兄という線は薄いように思える。

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