ワイヤー陣の弱点
前回のラウンド5ではワイヤー陣の強さが遺憾なく発揮された。
しかし、今回ではその弱点がはっきりと描かれることとなる。
結論から話すとワイヤー陣を完成させるまでの敷居の高さが一番の問題である。
ラウンド5で成功できたのは、初見だからという部分が大きい。今回のラウンド6ではその戦法が割れてしまっている。
一つ目に戦術の仕様上、オサムがターゲットになりやすいという点だ。
敵部隊から見たワイヤー陣の一番厄介な点は、完成されると玉狛第2に手出ししにくくなるという部分にある。
テリトリーに入ると機動力が増した空閑と闘わなくてはいけないし、ワイヤーにつかまれば即座に落とされてしまうリスクもある。
さらにそこに狙撃手や追加ワイヤーがあることを考えると、ワイヤーの領域内で戦うことは避けたい。
しかし他エリアで戦おうとしても玉狛の大砲・チカがいるため、ワイヤー外のエリアで戦うことは難しくなる。
ワイヤー陣が完成されるとスパイダーという名前通り、蜘蛛の糸のようにじわじわと追い詰められて喰われてしまう。
だからこそ完成する前にオサムを倒そうとする王子隊の判断は正しいといえる。
幸いにもオサム個人の戦闘能力は決して高くない。
合流より速攻という判断ができたのも1vs1なら勝てると確証があったからだろう。
以上のことより、放っておくと厄介である・個人戦ではあまり強くないという部分からオサムが始まりの段階で狙われてしまうリスクがある。
だからこそ、ラウンド5ほど余裕をもってワイヤー陣を張れない可能性が高いという点が挙げられる。
二つ目にワイヤーはどこにでも張れるわけではないということだ。
ワイヤーは広すぎる場所に敷き詰めることは難しい、かつ立体的に張れるほうが理想的なはずだ。
そう考えるとマップによってはワイヤー陣をつくれるところが何か所かに絞られてしまう。
かつバックワームを起動したとしても初期転送位置と味方・敵部隊の動きから、ワイヤー陣の場所についておおよその目星はつく。
だからオサムがどのあたりにいてワイヤー陣をどこに仕掛けようとしているのかが予測できてしまうのだ。
加えて近くまでいけば、ワイヤーの有無でオサムがいるかどうかは判断できてしまうのだから、隠れててもあまり意味がない。
こうした理由から場所バレのリスクがかなりあり、初期段階で破壊されるリスクも当然高い。
第3の問題点として、ある程度フリーな時間を要するということだ。
先ほど述べたように、オサムは初手から狙われる・場所がバレるリスクを背負っている。
そのなかでもワイヤー陣を作成する時間がどうしても必要であるのだ。
なおかつ、ワイヤーにはある程度の物量が必要なのだ。中途半端な量であれば、その効力は薄まってしまう。
それは開始直後に王子隊・樫尾と生駒隊・南沢がオサムに狙いを定めて寄ってきたとき、あえて戦闘を避けていることからも、ワイヤー陣はその物量が大切であることがわかる。
(ワイヤーは6割方張れてる。ここで迎え撃って空閑たちを待つか……⁉)
『ワールドトリガー』18巻 第152話「玉狛第2⑰」
ここでは早くに落とされること、ワイヤー陣をより仕掛けたかったという思惑もあっただろう。
ただその理由の中には6割程度のワイヤー陣では耐久性に優れないという判断も加わっているのだと思う。
そして一番わかりやすい事例は王子との直接対決だ。
片手で戦う王子に対して、戦闘力の差を見せつけられたオサムは苦し紛れにワイヤーを仕掛ける。
しかし王子が選んだ市街地というマップの道幅の広さ、そして何より物量のなさからほとんど効果が得られず、一矢報いることすらできずに離脱してしまう。
「この程度の数ならあんまり意味はないね」
『ワールドトリガー』18巻 第156話「王子一彰」
ただここでオサムは落とされてしまうものの、別場所に仕掛けていたワイヤー陣がうまく作用する。
結果、苦しい展開でありながら一番得点を獲得するに至る。
ラウンド6を終えて
ラウンド6を終えた玉狛第2にはいくつか課題点が残る。
一番はワイヤー陣を完成前に潰されるリスクがあるというところだ。
解説の北添や当間はこの部分を指摘している。
放っとくと面倒な戦術かつオサムとチカはタイマンではまだ弱い。
そうなれば事が大きくなるまえに倒すのがベストだ。
空閑もフォローいけるとき・いけないときが当然ある中で、前衛を務められる役割が期待されている。
新加入予定のヒュースがどういう立ち回りをするのか、という部分も含めて今後見ていければと思う。
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